24年も前に「校務の情報化」に着手、愛知県春日井市のICT活用の勘所 クラウド「セキュリティーに懸念」の向き合い方

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文部科学省は4月、「教員勤務実態調査(令和4年度)」の速報値を公表。前回調査と比較して在校等時間は減少したものの、依然として長時間勤務が多い実態が明らかとなった。調査では、ほぼすべての学校がICTを活用して負担軽減に取り組んでいることもわかったが、校務処理におけるICT活用は授業や学習におけるそれと比較すると思うように進んでいない印象がある。そんな中、1999年から独自に校務の情報化を進めてきた愛知県春日井市は、GIGAスクール構想を追い風としながら校務におけるICT活用をさらに前進させている。クラウド利用の現状や教職員の働き方の変化について取材した。

校務におけるICTの活用が進まない理由

GIGAスクール構想によって、公立の小・中学校に高速通信ネットワークと児童生徒1人に1台の端末とが整備され、授業や学習においてICTを日常的に活用する学校が増えてきた。だが、校務といわれる先生たちの事務作業にICTを活用して効率化を図っていこうという動きは思ったほど進んでいない。

校務の多くが紙ベース、職員室にある端末でしか処理ができない、教育委員会ごとに利用しているシステムが異なり人事異動のたびに一から使い方を覚えなくてはならない……など、いまだ課題が山積しているからだ。

校務においてもICTをうまく活用することができれば、教員の長時間労働を解消し、学校の働き方改革をもっと進められる。学習系や校務系など各種データを連携させれば教育の高度化、教育施策の効率化にもつながるとして、2021年から文部科学省の専門家会議でも議論されてきた。今年3月には「GIGAスクール構想の下での校務DXについて〜教職員の働きやすさと教育活動の一層の高度化を目指して〜」で今後の校務DXの方向性が示され、各教育委員会に広く周知されることになっている。

1999年から校務の情報化に取り組んできた愛知県春日井市

だが、「校務の情報化」という言葉がない1999年から校務の情報化に取り組んできた自治体がある。名古屋市の北東に位置するベッドタウン、愛知県春日井市だ。当時はインターネットの草創期で、既存のビジネスモデルを覆すようなサービスが生まれるなど、IT関連企業が大きく成長した時期である。

水谷年孝(みずたに・としたか)
春日井市教育委員会 教育研究所 教育DX推進専門官、市立高森台中学校 前校長

春日井市には、いったいどのような問題意識があったのだろうか。今に至るまで春日井市で長く校務の情報化に携わってきた春日井市教育委員会 教育研究所 教育DX推進専門官で市立高森台中学校の前校長・水谷年孝氏は振り返る。

「授業でインターネットを利用するための整備が始まりかけていた時期でした。ただ、ICTが便利で使えるものだということを先生たちが理解していなければ、授業では絶対に使わない。そのため、企業でやっていることを学校でもやることができれば便利になるから、まずやってみてはどうかと言われたのです」

春日井市の隣にある小牧市からのアドバイスだった。小牧市は、98年から校内のネットワーク整備を計画していた。そこで春日井市でも、まずは校内ネットワークを整備し、校務の情報化による業務改善から着手しようと、翌年に向けて計画を作ることになったという。

「最初は、いろいろな情報を共有することから始めました。メールを使って学校間で連絡を取ったり、校長や教頭など役職ごとにメーリングリストをつくったりしました。ほかにも校内の情報共有として電子掲示板の利用や、それまで各学校で工夫してつくっていた成績処理、保健統計、進路指導などの処理システムの市内統一化を進めました」

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