24年も前に「校務の情報化」に着手、愛知県春日井市のICT活用の勘所 クラウド「セキュリティーに懸念」の向き合い方
「先生がゼロから100まですべて伝えなくてもいい。先生の役割が、ファシリテーターに変わってきていると思います。生徒にも個人差があるので、もちろんうまくいっていないときは指導しますが、今は全体ではなく個別に指導する方向に変わってきています。グループで勉強を進めると同時に、子ども同士でも情報を共有できるので、互いに教え合うこともでき、個別最適な学びも協働的な学びも同時に起こる複線型の授業になってきました。先進的な私立校だけでなく、普通の公立校でも十分に実践できることなんです」
これまでは先生が教える一斉授業がスタンダードだったから、「子どもたちの力を信じて任せる」といっても、できるはずがないと言う先生も多くいることだろう。だが春日井市では、GIGAスクール構想がスタートしてからの3年間で学び方や調べ方の指導もしてきた。子どもたちが自分で学べるように素地をつくってきたわけだ。
読み書きの点においても、これまでは書かない子がたくさんいたが、キーボード入力になってからは文章を書く子が多くなり、アウトプットの量も質も高まっている。テストでも、わからないからとすぐに諦めていた子が、考えて一生懸命書くようになった。「こうすると文章が書ける、自分の言いたいことを表現できる」ということを端末を使ってわかっているので、自分で考えて書くというハードルが低くなっているという。
このように校務の情報化をいち早く推進してきた春日井市。現在までに教員と児童生徒の両方がICTを活用するメリットを享受しつつあるといえるが、将来的にどのような方向に進んでいくのだろうか。

「これは24年前から同じ考えで、校務の負担を減らして授業のことを考える時間を増やす、あるいは子どもと接する時間を増やすという方向性に変わりはありません。さらに今はいろいろなデータがクラウドで集まり始めているので、このデータをうまく可視化していく。これからはデータを活用しながら指導に役立てたり、子どもたちの異変のサインを感じ取れたりすることができればいいと考えています」
(文・國貞文隆、編集部 細川めぐみ、写真:すべて水谷氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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