24年も前に「校務の情報化」に着手、愛知県春日井市のICT活用の勘所 クラウド「セキュリティーに懸念」の向き合い方
取り組んだのは、学校内の情報共有、学校間の情報共有、校務支援システムの市内統一化の大きく3つだ。実際の運用は99年10月からスタートしたが、すぐにその効果を実感することになった。
「電子掲示板を利用すればいちいちみんなが集まらなくてもいい。当時、私の学校は60人以上の教員がいましたから、集まるだけでも大変だったので、本当に情報共有がしやすくなりました。学校間でいちいち電話で連絡していたのも、メールで簡単に連絡が取れるようになった。また、校務支援システムを市内で統一したことによって、転勤で学校が変わっても、人に聞かずに校務処理ができるようになりました。ファイルサーバーのフォルダ構造も同じにしたので、どこに情報があるのかもすぐわかる。導入して1、2年近くで、みんなが便利になったという感覚が持てるようになりましたね」
GIGAスクール構想に伴ってクラウドでの情報共有に徐々に移行

その後、2006年からは普通教室に実物投影機や電子黒板を設置しはじめ、09年にはほとんどの教室で整備を完了。11年に日常的なICTの活用、14年に1人1台の端末活用を市内のモデル校で始めるなど、段階的にICT環境を整備していった。
GIGAスクール構想による児童生徒の「1人1台端末」体制をスタートさせたのは20年9月。それに先んじて、4月から教職員向けに「Google Classroom」のアカウント設定を開始しようとした矢先、新型コロナウイルスの感染拡大により一斉休校になってしまった。
だが、一斉休校で教員同士が離れ離れになっている状況下でGoogle Classroomを使い始めた。教員間で情報をやり取りしたいけれど、校内でも居場所が異なったり、在宅勤務をしたりしていたからだ。Google Classroomならば、一堂に集まらなくても基本的な情報はやり取りできるし、書類作成などに関してもゼロベースでみんなが確認しながら修正できる。Googleドライブで教材や授業動画を共有したり、Google Meetで朝の会をやってみたりもして、これらがクラウドの便利さを実感するいい機会になったという。
そこで情報共有も、学籍や成績などの機微情報を除いて、校務支援システムからクラウド上での共有に徐々に移行していった。

「クラウド利用に対しては、情報セキュリティーの観点から懸念もありました。しかし、これも24年前の発想と一緒です。新しいものには、誰でも不安を感じる。だからまずはクラウドで情報を共有してみて、皆さんにその便利さを実感してもらおうと徐々に始めることになったのです」
春日井市では、ここ1年でほとんどの学校が日常的な情報共有をGoogle Chatで行うようになった。それまでは職員会議の提案資料なども校務支援システムを使っていたが、これもほとんどがGoogle Classroomで共有されるようになった。
