戦車、装甲車など防衛産業の輸出強化を図る韓国 在韓外交官を招き防衛産業の優秀さをアピール

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射撃訓練を行うK2戦車(写真・韓国外交省)

韓国外交省が在韓外交官らを韓国防衛産業の現場に招待し、韓国産兵器の優秀さをアピールした。

韓国外交省の李度勲(イ・ドフン)第2次官は2023年5月2日、防衛産業の輸出対象国を含めた18カ国の在韓外交官らを韓国首都圏・京畿道の訓練場に招き、陸軍第8機動師団とともに実践配置された韓国産兵器の優秀さをアピールした。

ここでは、国際的に優秀さが認められた「K2」戦車(「黒豹」)とK21歩兵戦闘装甲車の機動訓練と戦闘射撃訓練を行い、参加者にはK2戦車への搭乗体験も行われた。

李次官は「最近、韓国の防衛産業による輸出が大きく増加し、国内外で注目されている。韓国の優秀な防衛産業からの輸出が拡大し、世界の安全保障への協力強化へ寄与することを望む」と述べた。

今回の行事に参加した外交官らも、韓国の武器システムに対して強い関心を示しており、実践に近い形で行われた射撃訓練を観覧し、試乗もしながら、韓国の武器の優秀さを体験できたとの声が多かった。

(「ソウル新聞」2023年5月10日掲載)

武器輸出で日本の先を行く韓国防衛産業

韓国の防衛産業は日本の防衛産業よりも世界から注目を集めていると言っても過言ではない。とくに2021年の輸出額は70億ドル(約9500億円)と、最高額となった2014年の36億ドルから倍増した。

さらに2022年には170億ドルの輸出額を達成した。韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相は最近「2023年の輸出額は200億ドルが目標」と述べるなど鼻息が荒い。

2022年に輸出が急増したのは、ポーランドとK2戦車980両、K9自走砲648門、国産FA-50軽攻撃機48機などを受注したため。ウクライナ戦争でポーランドは戦車提供など支援に積極的だったが、その穴埋めのために韓国産を選んだ。K2、K9は一部を輸出し、大部分はポーランドで現地生産する計画だ。


韓国は2021年にオーストラリアへK9自走砲を30門、約10億ドルで販売した。2022年2月にはエジプトに約200台、約17億ドルを輸出。すでに2001年にはトルコ、2014年にポーランド、2017年にインドとの輸出実績がある。2021年にはUAE(アラブ首長国連邦)に中距離地対空ミサイル「天弓」を35億ドルで契約している。

韓国製が求められるのは欧米などの先進企業の一部製品を除いては、おおよそ技術や能力は遜色なく、かつ価格が安いためだ。

まだ分断国家として北朝鮮と対峙する環境で、アメリカとの同盟関係にありながらも、「自分の安全は自国の武器で守る」とし、防衛産業の育成に長らく努力してきたという背景もある。とくに2008年に李明博(イ・ミョンバク)大統領が就任すると、防衛産業の育成を新たな輸出・経済成長のエンジンとして拡充してきた。

韓国の国防研究開発費は約4000億円と増加傾向にあり、日本とは倍以上の差がある。国防費全体も日本と肩を並べる5兆円規模だ。

ウクライナ戦争に関しては、2023年4月に機関銃や戦車砲に使う弾をポーランドに輸出すると明らかにした。ポーランドはウクライナを支援しながら防衛力の強化に取り組む関係で、韓国との防衛協力が深まることになる。

当然、韓国はロシアとの外交摩擦を避けようとしており、本格的な兵器・装備の輸出には及び腰だ。ただ、ポーランドをはじめ輸出国との関係が深まるにつれ、アメリカや日本との関係もあり微妙な立場に立たされる可能性が高い。
(福田恵介:東洋経済 解説部コラムニスト)

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