「呪術廻戦」制作会社が挑むアニメ業界の悪習打破 MAPPAが「チェンソーマン」に100%出資した狙い

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――下請けとして自転車操業に陥っている制作会社も多い中、いかに100%出資できるだけの資金を確保したのですか。

会社のスタート時はとにかく本数を稼ぐしかない。ただ、制作費とわずかな制作印税だけで会社を経営していると自転車操業になってしまう。そのため制作によって得たお金を少しずつ出資に回していく必要がある。100%出資はその割合をだんだん大きくしていった結果だ。

制作会社を経営する上で難しいのは、アニメを制作するには時間とお金がかかるということだ。1クール(3カ月の放送期間)の放送作品でも、制作には2~3年かかる。それで利益が数千万円残る程度ではかなり厳しい。ビジネスが成り立たず、ただ作っているだけになってしまう。

今後すべて100%出資でやっていきたいわけではないが、大事なのは出資によって(他の出資者と)対等な関係で作品を作っていくことだ。

求められる人材確保と育成

――制作会社の経営者に求められるものは何でしょう。

これまでアニメ制作会社の経営は「未開の地」だった。少数の天才が道を作る、宇宙のビッグバンのような発展が先人たちの時代だ。しかし、企業として大きくなって、組織としても発展し、世界で戦える作品を創造していくような会社はあまり現れていないように思う。ゲーム会社はそのような経営が出来ている。

これからの制作会社の経営に求められるのは、人材の確保と育成だ。会社の成長のために、どういう人材が必要かを考え、必要な人材が入って来られるようにすることだ。また、その人材に対してどういうメリットを与えられるかを考えることでだんだんと人材を増やしていく。

アニメの制作本数が年々増える中で重要なのは、旺盛な需要に対して十分な供給を生み出せるかということ。そのため一番大事なのはやはりお金。お金がなければ育成もできず、制作の環境も整えられない。

大塚学(おおつか・まなぶ)/MAPPA代表取締役。1982年生まれ。 アニメ制作会社STUDIO4℃を経て、2011年にMAPPA設立に参加。 2016年から現職。2019年にグループ会社として株式会社コントレールを設立(撮影:梅谷秀司)

―――MAPPAではどのように人材育成を行っているのですか。

ずいぶん前から、最初に研修期間を設けた上で本番に入っていく形式をとっている。年々、研修内容をバージョンアップしているが、それでも満足のいくレベルには達していない。学生の数が減っている中で、もっと根本的な育成をやっていく必要がある。

現在の業界は、たまたま応募してきた上手い人を取り合っている状況だ。上手い絵描きが応募してくれるのを期待するのではなく、若い世代に企業側がアプローチをしていく。プロ野球やサッカーのスカウトが参考になる。自分たちで時間をかけて必要な人材を生み出せるようになりたい。

―――作品選びにおいて重視していることは。

”時代感”が大事だ。今何が受け入れられやすいのか。そこにフィットしている作品なら自然と業績もなんとかなるし、人も集まってくる。

今の業界は有名原作のアニメを作ることが特に志向されている。それによって回避できるリスクもあるので、我々としてもその流れを壊す必要はない。

ただ、このまま業界のみんなが競って原作を取り合っていれば良いかというと、絶対にそうではなくなる。3年後にどうなっているのか正確に読み切れない中で、柔軟性が求められている。

 オリジナルアニメも、原作アニメに全然負けていないと私は思っている。『リコリス・リコイル』のように強いインパクトを残している作品もある。自分たちで愛されるキャラや作品を生み出すには、オリジナルアニメにチャレンジして経験を積む必要がある。

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