そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声

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だが百貨店の顔である1階を含めた半分がヨドバシの店舗になるのは、そごう・西武としては受け入れがたい。ヨドバシと隣り合わせになる高級ブランドが逃げるのは必至で、客離れが加速し事業継続すら危ぶまれかねないからだ。

こじれているのはそれだけではない。フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ。

「契約に盛り込まれているなら即座に話し合いの場を持ち、時間をかけて説得に当たるべきなのに、井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」(そごう・西武関係者)との声が上がる。

そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。

そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」(西武HD関係者)との見方がもっぱらだ。

組合側も態度を硬化

組合側も態度を硬化させている。「インサイダー情報に当たる」としてセブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」(投資ファンド幹部)なのだ。

さらにここにきて混迷に拍車をかける出来事が起きている。売却話が出てから1年が経過した今年2月、セブン&アイの株主が取締役を相手取り、売却の差し止めを求める仮処分を申し立てたのだ。東京地裁は却下したものの株主はこれを不服とし、東京高裁に即時抗告。近々、取締役を相手取り、株主代表訴訟にも打って出る構えだ。

「ここまできたら一度、ディールを取りやめ、仕切り直すべきではないか」と市場関係者は口をそろえる。だが、そうなればフォートレスはヨドバシに多額の違約金を支払わなくてはならなくなり、認めるはずがない。そごう・西武の売却は袋小路から抜け出せそうにない。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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