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セブンの礎築いた伊藤雅俊氏がかつて語った本音 「世襲」「企業価値」「人材育成」の考えをひもとく

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鈴木氏が元セブン&アイの最高情報責任者(CIO)を務めた次男の鈴木康弘氏を社長にしようとしていたことが伊藤氏の耳に入った、と指摘するマスコミも少なくなかったが、鈴木氏は頑なに否定。鈴木氏を知るライフの清水氏も「それはない」と見ていた。 

冷静かつフレキシブルな思考

一方、伊藤氏の子息について、重要な発表が逝去前日の3月9日に行われた。「代表取締役の追加選任」である。

伊藤雅俊氏(右、1989年撮影)の次男の順朗氏が代表権を持つ取締役に(撮影:今井康一、高橋孫一郎)

4月1日付で、取締役常務執行役員経営推進本部長を務める次男の伊藤順朗氏が、代表取締役専務執行役員最高サステナビリティ責任者(CSuO)兼ESG推進本部長兼スーパーストア事業管掌に就任することになった。

社内の人望も厚いことから、早くも次期社長候補として噂されている。そうなると、伊藤家への「大政奉還」ということになる。

伊藤氏が世襲経営を貫徹しようとしている、と言う声も聞かれた。だが、伊藤氏は世襲にそれほどこだわっていなかったようである。是々非々の考えを持っていた。

「同族だから悪い、非同族だからいい、というように、規定することがいけないのではないですか。親族に無理やり継がせたら潰れてしまった会社もあるし、継がせなかったから良くなったという会社もあります。会社や産業には寿命や構造の違いがありますしね。
 家業ということで代々親族が継いでも、経営を破綻させてしまった人が京都辺りでは、たくさん見られました。同じく京都の企業でも、(世襲経営をしなかった)稲盛和夫さんが成功者として大変注目されています」

成功した経営者、特に創業者は、自分の経営スタイルにこだわり、自分と同じような能力を持つクローンを求めがちである。伊藤氏も「社長になれるような人は、なかなかいません」と話していた。

だが、伊藤氏は慎重派であるがゆえに、情報、変化に敏感な人であった。だから、時代に応じて変わることを躊躇しなかった。鈴木氏を約40年間応援し続けてきたものの、人生の最後になって意見が異なれば、はっきりと「No」と言う。実に伊藤氏は、冷静かつフレキシブルな思考を有していたと考えられる。

セブン&アイの全株式のうち、伊藤氏は、バリューアクトの1.9%よりも多い2.2%を所有する大株主だった(2023年2月28日時点)。従って、投資家の目でセブン&アイを見る傾向が晩年、強まっていたようである。とはいえ、アクティビストにありがちな短期的思考ではなく、ウォーレン・バフェット風の長期的思考(長期保有)を前提としていたように思われる。

ただし、晩年に見られた世の中を騒がせた一連の動きについては、「秘め事」に相当する部分も含まれているのだろう。繰り返すが、経営者の頭の中のすべては誰にもわからない。こう書けば、社外取締役の存在意義について議論を深めなくてはならない。それを極めようとすれば、記事だけでは発表できない大論文になるのではないだろうか。

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