静岡リニア、露呈した川勝知事と流域市町の軋轢 「ああ言えばこう言う」と揶揄された対応の数々

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、そもそも県境から300m以上離れた山梨県内で発生した水が山梨の水か、それとも静岡の水かを区別できるのか。さらにいえば、仮にその水が静岡県内に降った雨だとしても、それが何十年も前に降った雨で地中を山梨県側に移動して、山梨県内に長期間とどまっていたら、それも静岡県の水なのか。

県の専門部会では地下水の移動状況を調べることでどちらの県に属する水なのかを推定するという。科学的・工学的と言いつつ、県とJR東海の間では、そんな議論が大まじめに行われている。

ダムの取水抑制案「『待った』は県だけ」

同時にもう1つ重要な議論がある。トンネル湧水の全量を大井川に戻すための方策だ。JR東海は湧水全量を戻す設備が完成するまでの期間中、山梨県側へ流出する湧水と同量の水を川に戻す方法として、大井川の水を使って発電している東京電力田代ダムの取水抑制を検討している。工事の一定期間、田代ダムの取水を抑制し、工事に伴う県外流出分と同量の水を大井川に還元するようJR東海が東京電力と交渉する。東電からすれば取水量が減り発電に影響が出るため、その分はJR東海が東電に補償する。

東京電力は大井川から最大毎秒4.99トンの水利権を持っている。東電の取水を認めているのにリニアの湧水流出は認めないのは県のダブルスタンダードに思えるが、それはさておき、県外に流出した水と同量を東電が取水抑制するという案は、ある意味で抜本的解決策といえる。

東電はJR東海に対し「事前に流域関係者の合意を得てほしい」と注文した。ところが、県は「JR東海との交渉は県が窓口である」として、JR東海と流域関係者の個別交渉に待ったをかけた。これに対し、JR東海は、2022年10月の有識者会議後の取材の場で難波喬司理事(当時)が、「直接JR東海が各市町に行くことを私たちが止めているわけではない。接触されるのはいいのではないか」と述べたことを引き合いに出すと、県は一転して、流域関係者が一堂に会してJR東海が説明を行う場を設けることにした。

次ページ流域首長「何回もやりとり、時間の無駄」
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事