静岡リニア、数字が示す「62万人の命の水」のウソ 流域7市の大井川からの給水人口は26万人程度

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静岡県議会産業委員会で川勝知事のウソが明らかになった(静岡県庁、筆者撮影)

県大井川広域水道(企業団)が県企業局所管の榛南水道を統合する実施協定が9月16日に結ばれた。静岡県の川勝平太知事は、リニアトンネル工事静岡工区の着工を認めない最大の理由を「下流域の利水に支障があり、県民の生死に関わる」などとしてきたが、今回の締結でトンネル工事の影響にかかわらず、大井川広域水道に十分な余裕があり、下流域の利水に何ら問題ないことが明らかになった。

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大井川の給水には十分な余裕がある

県大井川広域水道は毎秒2立方メートルの水利権を有し、7市(島田、藤枝、焼津、牧之原、掛川、菊川、御前崎)約62万人の利水を担う目的で設置された。

一方、榛南水道は1969年から大井川河口近くの吉田町を地下水の取水地として、牧之原市、御前崎市の2市に給水事業を行い、日量約2万7000立方メートルの給水能力に対して、現状、日量約1万5000立方メートルを給水している。

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今回の統合の目的は、人口減少による水需要の減少、総事業費約260億円という榛南水道の更新費用の確保などの課題に対応するもの。榛南水道を廃止して、大井川広域水道から2市へ約1万5000立方メートルを供給する。

大井川広域水道への連結、榛南水道の廃止に伴う費用を含めて総事業費は約100億円で、榛南水道を更新するよりも約160億円削減される。本年度から基本設計が始まり、2029年4月に給水が切り換えられる予定だ。

10月6日に開かれた県議会産業委員会で、県企業局は「大井川広域水道が水不足に悩まされたことはない。給水に十分な余裕がある」と説明した。榛南水道が枯渇状態にあり、やむをえず、統合するわけではなく、老朽化に伴う事業費の大幅な削減に伴い、給水能力に十分な余裕のある大井川広域水道に全面依存するほうが合理的と県は判断した。

これは、「大井川は毎年のように水不足で悩まされている」とする川勝知事の説明とは異なる。

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