アシアナ航空、相次ぐ事故に"韓国病"の影 韓国第2のエアラインに何が起きているのか

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その渦中に、韓国恒例の“お家騒動”が発生する。朴会長の弟で、錦湖アシアナグループ化学部門会長の朴贊求(パク・チャング)氏が、グループの錦湖産業の保有株式全量を売却。と同時に、錦湖石油化学の株式を買い増し、朴会長に反旗を翻したのである。

財務改善のため、いったん買収した大宇建設を売却しようにも、当時の経済状況では買ってくれる相手先も見つからない。そのような危機の中で発生したお家騒動を受け、2009年7月、朴会長は弟を解任。本人も経営の一線から退いた。そして、グループは錦湖アシアナと錦湖石油化学の2つの分裂してしまった。

お家騒動という"韓国病"が襲う

アシアナ航空は一時、債権団による共同管理下に入った(撮影:尾形文繁)

その後、グループの主要企業は「ワークアウト」(日本でいう民事再生法の適用)を受け、アシアナ航空も「自律協約」(債権団による共同管理)に入った。2010年7月には、朴三求氏が会長として経営に復帰している。

経営再建を続けてきたアシアナ航空が、自律協約から抜け出したのは2014年11月のことだ。「過剰投資による経営不安にお家騒動。韓国財閥の宿痾ともいえる問題が、アシアナ航空にも影響を与えている」と、藤田東アジア研究所の藤田徹代表は指摘する。

商社マンとして韓国に滞在し、同国企業に詳しい藤田氏は、2010年以降、アシアナ航空にトラブルが多いことについて「直接的な関係はもちろんない」と前置きしたうえで、「経営の状況が悪くなると、社員にもそれが伝染する。さらに、大韓航空に比べ歴史が浅く、社員の教育体制にもまだ十分ではない点があるのでは」と指摘する。

また、チェジュ航空やジンエアー、イースター航空など、韓国でもLCC(格安航空会社)が相次いで生まれており、競争が激しさを増している。「アシアナ航空も傘下にLCCのエアプサンを持っているが、日本の人口の半分の国に航空会社が乱立していることによるプレッシャーも大きいはずだ」と藤田氏は見る。

効率と安全。運輸業界に共通する課題ではあるが、お家騒動を経て、その両立の難しさがアシアナ航空にも出てしまったのだろうか。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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