便利になる?JR東日本、Suica「見えない大変化」 運賃計算クラウド化、割引クーポンなど可能に

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では、同様のシステムがほかの鉄道各社に広がることはあるのだろうか。JR東日本は「他事業者でのセンターサーバー方式に関する検討状況は承知していない」という。今後のキーとなりそうなのは、プレスリリースにある「本システムは株式会社ICカード相互利用センターが所有するシステムです」の文言である。「ICカード相互利用センター」が、Suicaのシステム上で重要な役割を果たしているということになる。

相互利用センターは、首都圏ICカード相互利用サービスを開始するために2004年3月に設立された会社であるという。主な業務内容は、ICカード相互利用に伴うデータの処理や、ICカードシステムにかかる共通的なデータ管理・仕様管理となっている。SuicaとPASMOの共通基盤のための会社であるといえるだろう。「ICカード相互利用センター」とかかわるPASMO採用事業者が、JR東日本と同様のシステムを導入する可能性は考えられるかもしれない。

「クラウド化」は時代の流れ

鉄道のキャッシュレス化は交通系ICカードだけではない。福岡市地下鉄は今年3月27日から全駅でクレジットカードによるタッチ決済の実証実験を行っている。タッチ決済での実証実験に力を入れている南海電気鉄道では、4月20日から利用可能な国際ブランドを増やした。また同社ではQRコードでのデジタルきっぷを発売している。JR東日本も、2022年12月にQRコード読み取りが可能な自動改札機を代々木駅に設置している。

福岡市地下鉄七隈線 自動改札機
全駅でクレジットカードによるタッチ決済の実証実験を行っている福岡市地下鉄の駅改札(編集部撮影)

こういった複数のキャッシュレス手段に対して、Suicaなど交通系ICカードの優位性は処理速度の速さだが、それゆえのコストの高さという課題がある。

新たな乗車券システムに取り組んでいる会社はほかにもある。広島県で路面電車やバスを運行する広島電鉄とNEC、レシップの3社は、スマートフォンに表示させたQRコードや新たな交通系ICカードを認証媒体とする「ABT方式」という新乗車券システムの開発を進めている。

これは認証媒体となるQRコードやICカードの固有のID番号と紐づいた利用者の情報をクラウドサーバーで管理する方式で、チャージ残高や定期券などの利用者情報をサーバーで保持・参照・更新し、車内などの機器では高速な計算処理を行わず、システム全体のコストを下げられる。JR東日本のSuica新システムと細かな違いはあれど、似たような発想に基づいたシステムといえるだろう。むしろ、こちらのほうが先進的であるといえるかもしれない。

さまざまな分野でクラウド化が進んだ現在、鉄道のチケットレスも改札機での計算処理ではなく、高速回線を使ってサーバーで処理する方式が今後の流れとなっていきそうだ。

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小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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