野党も称賛、自民「森山演説」が示す今の政治の欠点 国会議員在職25年、地方出身のたたき上げ人生
森山氏は演説では触れなかったが、苦い経験を持っている。森山氏は、小泉純一郎政権で進められた郵政民営化に反対し、衆院本会議では反対票を投じた「造反組」だ。「郵便局が民営化すれば、地域の金融サービスの担い手が弱くなる」という理由だった。
2005年の郵政選挙では自民党の公認が得られず、無所属で出馬。自民党は「刺客」と呼ばれる対抗馬を擁立した。私は当時、森山氏の選挙区(鹿児島5区)を取材したが、森山氏の後援会が「刺客を撃退しよう」と沸き立っていたのを覚えている。
持論を明確に打ち出す姿勢の大切さ
選挙結果は森山氏の圧勝。第1次安倍政権の2006年12月に自民党に復党した。小泉政権は郵政民営化をはじめ、市場原理優先の新自由主義的政策を進めたが、森山氏は地方の生活を重視して異議を唱えた。
自民党は時に議論をまとめきれず、強引な政策運営を進めることがある。森山氏の「造反」は、時の流れに抗して持論を明確に打ち出す姿勢が政治家にとって何よりも大切であることを教えてくれている。
新型コロナウイルスの感染拡大への対応や景気対策として財政出動が拡大する中で、森山氏は財政再建を重視する立場でも知られている。自民党内の論議では「将来世代へのツケとなる借金を減らす方策を考えるのが政権与党の責任だ」と説いている。だが、アベノミクスから続く「財政頼み・国債増発」に歯止めがかからない。
森山氏の演説には与野党から大きな拍手が沸いたが、拍手だけではなく森山氏の訴えを生かす方策を考えることこそが、政治家の責任である。
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