野党も称賛、自民「森山演説」が示す今の政治の欠点 国会議員在職25年、地方出身のたたき上げ人生

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森山氏は30歳で鹿児島市議に初当選、23年間務めた。「日本を支えているのは地方であり、第1次産業であると実感した」という。

1998年、参院議員に初当選。53歳、政治家としては「遅咲き」である。2004年には衆院に転じ、2015年に農林水産相に就任。農業分野の市場開放を進めることになるTPP(環太平洋経済連携協定)が大筋合意した直後で、「農林族」の森山氏としては、農業や畜産の関係者をいかに説得するか、手腕が問われていた。

森山氏は演説で振り返った。

「大臣室の椅子に座り、目に浮かんだのは、農家に不安の声がある中で、郷里の先輩や後輩たちの姿でした」

「汗水流して田畑を耕し、家畜を育てていく。農業から逃げた私は、政治家としてその奮闘に応えなければならない。現場を回りながらTPPの説明を尽くし、安心安全な日本の農林水産業は強いこと、若者が誇りをもって働ける産業に育てることを訴えました」

歴代最長の党国対委員長、野党からの信頼も厚い

森山氏は2017年8月、自民党国対委員長に就任した(撮影:尾形文繁る)

森山氏は農水相在任中、TPPの重要性を説く一方で、農業の基盤を守るための施策を強化する考えを説明し続けた。市場開放や負担増などは関係者にとっては厳しい政策だが、粘り強く説得を続けることが政治家の大切な仕事である。岸田首相をはじめ政治のリーダーが耳を傾けるべき姿勢だ。

森山氏は2017年8月、自民党国対委員長に就任。歴代最長の1534日間の在職を記録している。「譲れない一線を守りつつ、野党の皆さんの意見にはできるかぎり耳を傾け、合意形成を図ってきたつもりです」。

安倍晋三、菅義偉両政権下の国対委員長であり、首相官邸からは強硬な国会運営を求められる場面も多かった。それでも立憲民主党の国対委員長だった安住淳氏や辻元清美氏らを相手に粘り強い折衝を進め、野党の言い分を聞き入れて衆参両院の予算委員会などを頻繁に開催した。野党が反対した法案を森山氏の判断で廃案としたケースもあった。

政府・与党が作り上げた予算案や法案でも、野党の声を聞き、合意作りをめざす。国権の最高機関である国会の機能を尊重することが、森山流国会運営の基本である。そうした経緯もあり、森山氏に野党の信頼も厚い。

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