27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 このままでは最大80万人が不足する事態に

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20代、30代の働き手は、親よりもずっと、自分が面白いと思えるキャリアを手に入れたいと考えている。また、専門的なスキルを持つ人は、終身雇用の必要性をあまり感じない。そのため、よりやりがいのある仕事、より高い給与を求めて転職を希望する人が増えている。

1970年代から1980年代前半に採用された25歳から29歳の人たちが、最初は1つの会社に10年間勤めたとする。そのうちの70%は、少なくともさらに10年以上勤続している。しかし、15年後に採用された人たちでは、52%しか残らなかった。同様の傾向は、度合いは低いものの、それ以上の年齢層でも見られる。

IT人材の給与を上げることは必然

この世代交代に加え、専門的なスキルを持つ社内人材の不足に対応するため、現在では中途採用の人材を確保せざるをえない企業も増えている。1999年当時、中途採用を実施していた企業は、大小問わず37%にすぎなかった。今では70%近くになっている。

さらに、優秀な中途人材を引きつけるために、企業はより高い給与を支払わなければならない。2009年当時、勤務先から別の勤務先に転職した人のうち、10%以上の賃上げを実現した人は13%にすぎなかった。しかし、2017年には、その割合は27%に倍増している。

経験則や各種調査によると、この変化の恩恵を最も受けているのは、熟練したデジタル人材であることがわかっている。 富士通やNTTデータなどの企業は、最もスキルの高いデジタル系社員に年間1000万円以上支払っている。

2019年、NECは優秀な研究開発職の採用者に初任給1000万円を提示したが、これは何年も前に採用した他の社員よりも高い給与を与えることになるケースが多い。パーソルホールディングスは、人材紹介会社として、企業のデジタル人材の確保を支援するとともに、ITに関する研修プログラムも提供している。外資系企業や日本の新興企業は、従来の日本の国内企業よりも大幅に高い給与を支払っている。

これだけですべての問題を解決することはできないが、正しい方向に進んでいることは間違いない。政府は、DXに関するレトリックを、しっかりとした現実的な対策に変えるべき時である。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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