相場にどう影響?「政治家の発言」読み解くヒント 日本やアメリカの要人のコメントを振り返る

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政治家の発言は、市場参加者にとってサプライズが大きい内容ほど、相場へのインパクトが大きくなります。とはいえ、その発言や政策が実行される可能性が高くなくてはいけません。

たとえば、インフレターゲット論にしても、安倍元首相は自民党総裁の頃から主張していましたが、円相場が目立って下落し始めたのは、衆院解散が決定した後、安倍氏が首相になってインフレターゲットが導入される可能性が高まってからのことです。アメリカのトランプ共和党候補が本選前にいくら「米ドル安」を主張しても、市場参加者がいちいち反応しなかったのもこのためです。

「金融所得課税の見直し」で株価下落

たとえば日本でいうと、2021年9月8日、当時自民党総裁選への出馬を表明していた岸田文雄氏は記者会見で、中間層復活のための政策として「金融所得課税の見直し」に取り組む考えを示し、メディアでも「金融所得課税増税」などと大きく報じられ、話題となりました。

金融所得課税は、預金であれば利子、株式であれば配当、株式を売却した際に得られた利益などに対して課される税金のことで、同じ所得税でも給与所得などと異なり、所得の多寡にかかわらず、一律20%となっていることがポイントです。

給与所得などの所得税は所得が増えるにつれて、税の負担が大きくなっていきますが、金融所得税は所得が1億円を超えるあたりから、税負担の割合が軽減されていきます。これが「1億円の壁」と呼ばれ、「金持ち優遇」との指摘もあることから、岸田氏は新しい資本主義として掲げる「成長と分配の好循環」の分配施策の一環として、「金融所得課税の見直し」を政策に盛り込んだのでした。

当初、市場の反応は限定的でしたが、9月29日の自民党総裁選で岸田氏が自民党総裁に選出されると、日経平均株価は急落。同氏は10月4日の臨時国会で第100代内閣総理大臣に指名されましたが、その2日後の10月6日までの約1週間で、日経平均株価は約2000円下落するに至りました。

金融所得課税の見直しを打ち出したことで、「成長戦略」よりも「分配施策」を過度に重視しているのではないか、といった観測が広がったことが、株価下落の一因となったのです。

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