生まれ変わった「京都丹後鉄道」の"目的地" "高速バスの革命児"は赤字鉄道をこう変えた

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地元の小学生たちが駅で出迎えてくれた

ただ、運営事業者として内定した後に同社が取ったのは、画期的というよりも、むしろ地に足の着いた行動。今はやりの朝ドラ風にいえば「地道にコツコツ」だった。

ウィラーの村瀬茂高社長は昨年6月、天橋立がある宮津市内に家を借り、週の半分を現地で暮らすという二重生活を始めた。現地の実情を肌で知るためだ。車を使わず、鉄道やバスだけで生活や仕事ができるか、3~4カ月試してみた。

結果は「公共交通だけでは厳しかった」という。マイカーの普及や少子高齢化といった外的要因もさることながら、鉄道ダイヤが不便という内的要因が利用者を減らしていた。口だけの理念ではなく、具体的に何かを変えないと鉄道を使ってもらえない。村瀬社長はあらためてそう感じた。

目指すは「公共交通のネットワーク化」

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京都丹後鉄道の観光列車「丹後あおまつ号」

地元の人に利用してもらえる交通とは何か。見えた答えは、鉄道、バス、フェリーといった公共交通をネットワーク化させて、スムーズに乗り換えできるようにすることだった。

鉄道の運行本数を増やし、ちょうど1時間おきに発車するパターンダイヤを導入。さらに、鉄道を軸として機動力のある路線バスとシームレスに接続することで、乗り換え時のストレスを軽減。バス路線がないエリアはタクシーやカーシェアリングを活用して、交通空白地帯の解消を目指すというものだ。「これが実現すれば、マイカーよりも便利になる」と、村瀬社長は確信する。

観光面でも、マイカーがなくても公共交通やレンタサイクルだけで観光地を回れる仕組みを作っていく考えだ。そのためには、地元の交通機関との連携が不可欠。路線バスにしても、運行ダイヤの変更が必要になる。「地元のバス事業者からは前向きに検討してもらっている」と村瀬社長は言う。

ただ、パターンダイヤの導入は多くの事業者との調整が必要になるため、一筋縄ではいかない。JR各線はすでに3月にダイヤを改正してしまっており、丹鉄が4月にパターンダイヤを導入すると、接続がうまくいかなくなってしまう。そのため、4月の開業に合わせたパターンダイヤの導入は見送られた。

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