北海道の旧胆振線「鉄道代替バス」も分断の必然 伊達市側と倶知安側の間に旅客流動の「分水嶺」

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鉄道の廃止から36年。2022年10月1日の道南バスのダイヤ改正にて、大きな変化が表れた。

結局、この総合振興局の境界を越える公共交通機関の需要はほぼ存在しなくなったため、1日3往復が設定されていた伊達倶知安線の全区間を通す便は9月30日限りで全廃。改めて伊達駅前―大滝本町東団地間(伊達大滝線)、倶知安駅前―喜茂別間(倶知安喜茂別線)に分断したのであった。

2021年7月に開かれた胆振線代替バス連絡協議会(伊達市、壮瞥町、喜茂別町、京極町、倶知安町と道南バスで構成)にて、年間約6000万円もの赤字を出していた大滝本町東団地―喜茂別間は、もはや沿線自治体の財政では支えきれないと廃止が決定。鉄道を代替したバスすらも廃止される現実が、静かに各地で進行している例の1つとなったのであった。

道南バスの伊達駅前バス停
伊達紋別駅前にある道南バスの待合室(筆者撮影)
大滝行きの道南バス
大滝行きの道南バスが乗り場に入る(筆者撮影)

10月1日以降、伊達大滝線は1日5往復が運転されている。他に土休日と学校の休日には運休する、大滝本町東団地発伊達駅前行き1本がある。路線改廃後のある日曜日、伊達駅前14時05分発に乗ってみた。伊達紋別駅前には小さいながらも道南バスの待合室が設けられており、厳しい冬の時期でも凍えずにバスが待てそう。胆振線廃止時の転換交付金によって整備されたものだ。

有珠山や昭和新山の麓を行くバス

発車時の乗客は1人だけであったが、伊達市役所前で5人ほど乗り込んでくる。伊達紋別駅は市街地の外れにあたり、イオンをはじめとする商業施設は、市役所や赤十字病院がある中心部に集まっている。

道南バス伊達大滝線
伊達市内を走る道南バス伊達大滝線(筆者撮影)

バスは室蘭本線に沿った国道37号を走り、長和地区に入る。現在もJR長和駅があるが、胆振線にも集落の外れに上長和駅があったため、このような運行経路が取られている。この地区で、乗客の大半が降りてしまった。

長和で国道453号へ右折。道央自動車道をくぐると、村界とわかりやすい名称のバス停があり、ここが伊達市と有珠郡壮瞥町の境となる。左手には有珠山がそびえ、昭和新山はさらに国道や旧胆振線に近い。昭和新山の隆起で鉄道も道路も崩壊した跡で橋台が残る「昭和新山鉄道遺構公園」も国道沿いにある。地図を見ると国道がこの付近でねじ曲がっていることがわかる。北の湖記念館前を過ぎると壮瞥町の中心部で、小さなバスターミナルになっている壮瞥役場前。元の壮瞥駅跡で、伊達市内からここまでは昭和新山、洞爺湖温泉などへ向かう道南バスも利用できる。

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