いわきの「一番店」仕切るママの超旺盛な事業意欲 事業を手広く展開することで地元の雇用に貢献
JR常磐線いわき駅の改札を出ると、南口駅前広場に「こりゃ都会だな」という光景が広がっていて驚くことになる。右手にはLATOV(ラトブ)という大型商業施設のビルが視界に入ってくるが、いわきの中心歓楽街「田町」は、その裏手に広がっている。なお、いわき駅周辺は、旧・平市にちなみ「平」とも呼ばれ、10万人ほどの地域人口を抱えている。
地元で広告代理業などを営む佐藤フロンズさん(ABCいわき情報館)によるなら、震災以降いわゆる復興バブルも影響し、田町は潤ってきた。実際、空きテナントはゼロになり、原発関連の作業員たちの宿泊も増えて街も賑わった(市内にスターバックスも3軒出店)。
福島県は比較的コロナによる時短営業などの規制期間が短かった(少なかった)地域だが、田町でも1割程度の飲食店は閉業し、取材時点(2021年12月)でも夜の街の客の回復度合いは5~6割程度といったところだという。バブルで高止まりした家賃も飲食店には重くのしかかっているのが現状だ。
商売をしながら地方経済に貢献
そんないわき市を以前、仕事で訪れた際、珍しく誰からの紹介もなく田町の夜の街を独り漂い歩いていたのだが、そのとき「多分ここが地域の一番店だろうな」と思って入ったのが、レンガ通りに面した「華姫」というラウンジだった。
華姫は白を基調とした清潔な印象を与える外観の店で、扉を開けるとカウンターの奥にたっぷりとボックス席のある広めの店内の様子が見える。初見のときには、カウンターに座り、地元のお客さんたちと和やかに歓談したが、初めての客にも居心地の良い店である。
国内での緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がすべて解除されたあとに、夜のまち研究会のメンバー・飯田泰之先生と訪れた際には、地元の人びとで満員御礼となっており、店の勢いというものをハッキリと感じたのだった。
この店のオーナーママは、笹原広美さん。いわき市でサラリーマンの父と専業主婦の母のもとに生まれ、地元の商業高校を卒業したあと旧常磐交通のバスガイドを経て、20歳のとき、姉と一緒に、田町にスナック「LOVE RING」を開業したのが夜の街での始まりだった。先述の佐藤フロンズさんは当時を思い出し、「ハタチの若いコが、ぽっとスナックを出して、そう長くは続かないだろうと思ったが、トンでもない思い違いだった」と言う。
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