日本株の堅調を支える内需と「もう1つの要因」 日米の最新経済指標を点検すれば見えてくる

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注目の労働参加率は62.62%へと0.14%pt上昇。これが3月雇用統計で最大の収穫であった。4カ月連続で労働市場の「厚み」が増し、人手不足感が緩和する方向にある。

年代別にみると、働き盛り世代の25~54歳(83.1%)がパンデミック(新型コロナウイルスによる感染爆発)発生前を凌駕した水準を維持する中、55歳以上(38.4%から38.6%)が2カ月ぶりに回復した。人手不足の主因になっている55歳以上の労働参加率回復は遅々としており、パンデミック発生前後の断層はなお大きいが、それでも低下に歯止めがかかったことは素直に好感できる。

アメリカ株が底堅さを増すこれだけの条件

また、賃金インフレの帰趨を読むうえで重要な平均時給は前月比プラス0.3%、前年比プラス4.2%となった。前月比の伸びは加速したが、瞬間風速を示す3カ月前比年率(3カ月平均)の伸びはプラス3.8%と下向き基調を強めており、賃金インフレは下火になりつつある。これはインフレ退治を最優先課題とするFRBにとっては間違いなく朗報である。

次にインフレ率(消費者物価)に目を向けると、こちらもFRBにとって心地よい結果となった。3月の総合CPI(消費者物価指数)は前月比プラス0.1%、前年比プラス5.0%となり2月から明確に減速している(2月は前月比プラス0.4%、前年比プラス6.0%)。

細かく見ると、食料品が前月比プラス1.3%と高い伸びが続き、前年比でもプラス8.3%と高止まりしたいっぽう、エネルギーが前月比マイナス3.5%と急落し、前年比ではマイナス6.4%へと2021年1月以来のマイナス圏突入、総合インフレ率を大きく下押しした。

これらを除いたコアCPIは前月比プラス0.4%、前年比プラス5.6%と市場予想におおむね一致し、2月と同程度の伸びであった。

もっとも、コアCPIの高止まりは家賃の高騰が主背景であることに注意が必要だ。住宅価格の先行指標であるケース・シラー住宅価格指数などは軒並み低下基調にあるため、コアインフレ率の低下は時間の問題と言える。実際、家賃を除いたインフレ率はすでに低下基調が明確化している。

これらの「適度に弱い」経済指標を踏まえると、5月2~3日に開催されるFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)では25bp(ベーシスポイント)の利上げが有力視される。

その後は、3月FOMC議事要旨にも記載のあったとおり銀行の経営不安、景気後退に配慮しつつ、既往の金融引き締め効果を見極めるために利上げを停止すると予想される。

引き続きインフレ率が順調に低下すれば、FRBは金融緩和方向への転換時機を模索すると予想される。こうした状況のもとで市場に緩和期待が芽生えれば、アメリカ株は底堅さを増すと予想され、それはもちろん日本株への追い風となる。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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