「オムライス」よく食べる人が知らない驚きの事実 実は海外由来、チキンライス伝来との関係も

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大正13年、干しぶどうの生産者組合が、干しぶどうを使った読者投稿レシピのコンテストを行いました。

応募されたレシピの中から一等賞に選ばれたのが、伝統的に干しぶどうをつかうチキンライスのレシピ。

そのレシピは冷や飯を使い、マッシュルームとタマネギのかわりに日本中どこでも入手できる松茸と青ネギを使った簡易版チキンライス。そしてトマトソースがない場合、ケチャップを使うことを推奨しています。

このチキンライスレシピを載せた干しぶどう生産組合の広告は、雑誌『婦女界』や『主婦の友』に複数回掲載されます。

『婦女界』は昭和4年に45万部、『主婦の友』も当時としては大部数を誇っていた影響力の大きいメディア(竹内幸絵・難波功士編『広告の夜明け』)。そこに、冷や飯とケチャップを使ったチキンライスレシピが繰り返し掲載されたのです。

ライスオムレツの渡来

19世紀半ばのイギリス料理における米は、菓子の材料や、野菜として料理の具材に使われる場合が多く、カレーライスやチキンライスの原型pilauのように米を主食扱いするレシピは例外的でした。

甘いライスプディングにライスコロッケ、ライススープ、生地に茹でたライスを練り込んだライスブレッド。主食以外に米を利用するこれらのイギリス料理は、米を主食とする日本人には受け入れられませんでした。

唯一の例外が、茹でた米を具材にしたオムレツ、ライスオムレツです。1880年の『Cassell's Dictionary of Cookery』におけるrice omelet。

Cassell's dictionary of cookeryライスオムレツ(画像:近代食文化研究会)

このライスオムレツ、アメリカにも伝播し、村井弦斎が所有していたアメリカの料理書『The American Cook Book』 (1887年)や『The Original White House Cook Book』 (1887年)にも登場します。

村井弦斎によってライスオムレツは日本的な変容を遂げます。玉子と混ぜていたご飯がオムレツから取り出され、ご飯を“柏餅のように”オムレツで包む方式に変わったのです。

つまり、具材であったご飯がオムレツから取り出され、主食となり、オムレツは主食を包む素材になったわけです。

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