自家製キャビア開発、ホテルマンの凄まじい奮闘 輸入に頼る中で、国産の開発が急がれている
野口氏は、フランス料理をはじめとした美食、ワインや日本酒といったお酒に造詣が深く、ホテルのオリジナルキャビアを作るという試みを、企画して推進した人物だ。
キャビア開発のきっかけは、冷凍食品の開発だったという。
「新型コロナウイルスの影響でホテルもレストランも大変な状況になっていたので、冷凍食品を開発して販売しました。舌の肥えたお客様に向けて、フォアグラや天然うなぎ、伊勢海老や蝦夷鮑、松阪牛、キャビア30グラムという、高級グルメセットを2人前10万円で売り出したところ、50セットがあっという間に完売しました」(野口氏)
高級食材が目白押しだが、その中でも人気だったのがキャビアだった。そこで野口氏は東武ホテルグループの中川浩司シェフならびに柴谷邦彦シェフとキャビアの商品開発に着手する。
「どのようなキャビア商品を作ろうかと、日々試行錯誤していたところ、2022年3月に中川シェフから『自家製キャビアを作った』という報告がありました。すぐに試食してみると、国産の一級キャビアとも遜色のないクオリティで非常に驚きを覚えました」
すぐに生産できなかった
東武ホテルマネジメントの自家製キャビアとは、次のようなものだ。
チョウザメの養殖業者から、生きたチョウザメを仕入れる。ホテルのキッチンでチョウザメをさばいて魚卵を取り出し、独自の製法で塩漬けし、キャビアに仕上げるのだ。
仕入れ先はフジキンだ。同社は特殊バルブを中心とした超精密ながれ(流体)制御システムのメーカーだが、実はチョウザメの養殖も手がけている。1992年には民間企業として日本で初めてチョウザメの人工孵化に成功した、日本におけるチョウザメ養殖の先駆者でもあるのだ。
野口氏はすぐにでも生産を開始したかったが、それはかなわなかった。
なぜならば、チョウザメの産卵時期は4~5月で、採卵時期はそれより前の11~3月であるためだ。4月では採卵時期を過ぎてしまっていたので、シーズンが始まるのを待つしかなかった。
そこで秋になるのを待ってチョウザメ1匹(8.4キログラム)を仕入れ、合計1キログラムのキャビアを作った。
塩分濃度は3%に仕上げられており、魚卵本来の旨味が感じられる。口溶け感は秀抜で、クリームのようなしっとりさもある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら