「野球YouTuber」成功する人・ぱっとしない人の差 引退後に「とりあえずYouTuber」では成功しない

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現役時代にコミカルな言動をして「あいつはやめたら芸人やYouTuberで食っていける」と言われる野球人もいるが、今のところあまり成功例を見ない。結局、トークや演技も「野球選手としては面白い」程度のものであって、プロフェッショナルのレベルではないのだろう。

野球YouTuberで成功するためには、現役時代のネームバリューに加えて、野球に対する深い知見、さらにはそれをうまく伝えることができる地頭の良さ、そしてそれを続けることができる「根気」が必要だ。

野球YouTuberに必要なこと

古い話で恐縮だが「プロ野球ニュース」の名キャスターとして一世を風靡した佐々木信也氏は26歳でプロ野球を引退して野球解説者になった。しかし他の解説者のように選手としての実績がない佐々木氏は、同じことをしていては埋没してしまうと、試合前にはグラウンドに降りて両軍の監督や選手に話を聞いた。

当時の解説者は取材などはせず、試合時間の直前に放送ブースに入って思いつくままを話すだけだったから、佐々木氏の取り組みは斬新だった。さらに佐々木氏は気象台に問い合わせて気温や天候などの知識も頭に入れたという。また家では発声練習やアナウンス技術を磨く練習もした。

そうした佐々木氏の努力が好評を博して、のちに「プロ野球ニュース」のメインキャスターに抜擢されたのだ。

当たり前の結論になるが、人様に見せるコンテンツを作って、それで収益を得るために必要なのは、クオリティであり、創意工夫であり、受け手のニーズに合致した内容を作るためのマーケティングなのだ。それは佐々木信也氏の時代から変わらない。そう考えると、野球YouTuberは案外、まっとうな仕事なのかもしれない。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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