「200件応募→採用ゼロ」IT企業インターンの真実 特権階級優遇の選考手法で庶民学生には狭き門

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エリートテック企業のインターンは数千の枠に対する応募が10万人を超すこともあるため、競争はときとしてハーバード大学合格を争うような熾烈さとなる。

そうした状況に対しては、有名テック企業の典型的な採用プロセスではコンピューティング分野のトップ校や業界関係者とコネのある学生が優遇されているといった批判も上がっている。

エリート私立大学がランキング上位の高校から重点的に学生を集めたり、卒業生の子どもを優先的に入学させたりしているのと同じ構図が見られるという批判だ。さらに富裕層の学生は、インターン応募に向けて履歴書や受験スキルに磨きをかける時間とチャンスにも総じて恵まれている。

「暗黙のうちに特権階級を優遇する仕組みが、採用システムに組み込まれてしまっている」と、工学分野で低所得層の学生の学位取得を支援する非営利団体「ラストマイル教育基金」の創設者で最高経営責任者(CEO)のルース・ファーマーは指摘する。

「サイドプロジェクトやハッカソン、テクニカルインタビュー(技術面接)のための勉強に多くの時間を割くことのできる学生が有利になっている。特権階級であるかどうかで、学生のポテンシャルの評価が大きく左右される状況になっているということだ」(ファーマーの非営利団体は、グーグル、マイクロソフトといったテック企業から資金提供を受けている)。

NYタイムズに寄せられた学生の「残酷」体験談

このようなインターン選考プロセスは、シリコンバレーの人材獲得・採用プロセスに長く存在してきた不平等を浮き彫りにしている。今年に入り有力なテック企業でレイオフや人員削減が相次いでいることから、インターンはますます狭き門となり、社会・経済的な格差に拍車がかかっていると学生たちは言う。

ニューヨーク・タイムズの問いかけに対し、学生、新卒者、ソフトウェアエンジニアなど300人近くが寄せてくれたテック企業のインターンシップや仕事に応募したときの体験談には、そのプロセスが「残酷」「フェアでない」「失望させられる」ものだったという声が含まれていた。

競争を勝ち抜くために、100件以上のインターンに応募したり、インターンの選考に使われるコーディングテストの準備をしたり、リクルーターに好印象を持ってもらえるよう個人のコーディングプロジェクトに取り組んだりといった活動にかなりの時間を費やしたと語る学生は何十人にも上った。その半分以上が、応募した企業から一切返事がなかったと回答している。

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