相続対策を後回しにする人ほど損をする納得事情 2024年からルール変更で生前贈与はどうなるのか

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一般的に、都市近郊農家の農業所得は、さほど多くありません。「現預金はない。収入も少ない。けれど、利用価値の低い土地だけはたくさんある」という実情を改善しなければ、「相続税を払うこと」も、「相続手続きをスムーズに進めると」も難しくなることが私には予想できました。

当事者になった私ができたこと・できなかったこと

そこで私は、父と相談をして、「父がまだ元気なとき」から、「問題地の解消」「農業に代わる現金収入の確保(賃貸事業)」「不動産管理会社の設立」「生前贈与」「遺言書の作成」など、「相続対策(相続税対策)」と「相続税の申告、納税の対策」に取り組みはじめたのです。結果、相続税を「約30%」減額させることに成功しました。

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一方で、その過程では父に、収益を生んでいない裏山の処分を了解してもらうのに3年を要しました。売却はさらにその2年後です。また、遺言を書いてもらうのには10年以上の年月がかかりました。さらに、相続対策として進めていた賃貸物件の契約直前に父が亡くなりました。

早く、計画的に対策を行っても想定外のことが起こる。それだけ難しいのが相続です。だからこそ、相続対策を早く始めることは大切であると、専門家として、当事者として実感をもってお伝えすることができます。税制が大きく変わるからこそ、1日でも早く、皆様が準備を始めていただくことを願っています。

清田 幸弘 ランドマーク税理士法人代表税理士

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せいた ゆきひろ / Yukihiro Seita

1962年 神奈川県横浜市生まれ。明治大学卒業。横浜農協(旧横浜北農協)に9年間勤務、金融・経営相談業務を行う。資産税専門の会計事務所勤務の後、1997年、清田幸弘税理士事務所設立。その後、ランドマーク税理士法人に組織変更し、現在13の本支店で精力的に活動中。立教大学大学院客員教授。急増する相談案件に対応するべく、相続の相談窓口「丸の内相続プラザ」を開設。また、相続実務のプロフェッショナルを育成するため「丸の内相続大学校」を開校し、業界全体の底上げと後進の育成にも力を注いでいる。

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