データが示す「転職が日本人の給料を上げる」根拠 「転職できるのはハイスキル層だけ」は事実無根

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たしかに、海外では解雇規制が緩和されていて、労働市場の流動性が高い国が多いことも事実です。しかし、解雇規制の緩和と生産性向上・給料上昇の因果関係は、日本で言われるほど明確ではありません。この2つには、たまたま強い相関が見られるだけの可能性も高いのです。

つまり、解雇規制を緩和するだけでは、生産性が向上しないことも十分にありうるので、「生産性を高めるためには労働市場の流動性を高めなければならない。そのためには解雇規制を緩和すべきだ」という主張は、根拠薄弱と言わざるをえないのです。

労働者自ら給料アップに立ち上がるべき

いずれにしても、前回の記事でも述べたとおり、日本では労働者が自ら働きかけないかぎり、経営者は賃金を上げてはくれません。このことは、直近30年の賃金の動向からもハッキリしています。その間、企業は規模の大小にかかわらず、内部留保金を貯め込み、労働者への分配を減らし続けてきたのです。

仮に、政府が一部の声に押されて解雇規制を緩和したとしても、大きな効果は期待できないのは、今回の記事で説明したとおりです。

人口が減少しつづける日本では、皆さんが自ら働きかけを行わず、これまでのように他力本願でいては、過去30年と同じことの繰り返しになりかねません。

とにかく自助努力を欠かさないこと。いまいる会社では給料を上げてくれそうにないのであれば、人材の確保に積極的な企業を探して転職すべきです。

最近ではだいぶ薄れてはきましたが、日本ではいまだに新しい会社にうつるために会社を辞めることに、後ろめたさを感じる人がいるように聞きます。しかし、そんな考えは今すぐ捨てるべきです。

社員に見捨てられてしまったとしても、責めを負うべきなのは、まともな賃金を払わない経営者なのですから

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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