メガバンクのあり方を「人工知能」が変える日

異業種の金融分野侵食に増す危機感

4月13日、東京・千代田区にある三菱東京UFJ銀行本店。「普通預金の口座開設について教えてください」という客の問いかけに、「はい。かしこまりました。普通預金の新規口座開設でいらっしゃいますね。ありがとうございます。普通預金の口座は・・・」と答え始めたのは、接客ロボット「NAO(ナオ)」だ。

ソフトバンクが出資する仏アルデバラン社製で、身長58センチメートル、重さ5.4キログラム。人工知能を駆使して日本語のほか英語、中国語でも応答ができる。「オリンピックを控えているので、日本語を話せない外国人への接客を考えている」(三菱東京UFJ銀行IT事業部の別筒正次長)という。

ただし、現状はまだあくまでも実証実験段階。NAOに話しかけても認識されず反応しなかったり、別の回答を始めたりすることもある。本店や、外国人の来店の多い営業店に数週間設置し、顧客の反応を見て、さらなる改良につなげていきたいとしている。

銀行が電子モールを始める?

メガバンクはいま、ICT(情報通信技術)の活用を急速に強化している。背景にあるのは、アリババや楽天といったEC(電子商取引)モール事業者やITベンチャーが、相次いで金融分野へ参入してきていること。アリババのアリペイや、アップルのアップルペイといった決済分野のみならず、アマゾンや楽天は出店者に対する融資も始めている。

こうした異業種からの参入はメガバンクにとって大きな脅威となっている。金融庁に規制の見直しを求め、銀行グループも電子商取引ビジネスや金融関連ITベンチャーへ出資できるよう要望・意見を出した。これを受け、金融庁金融審議会は3月3日から「金融グループを巡る制度のあり方」についての議論を始めた。三菱東京UFJ銀行IT事業部の井口寧次長は「規制が緩和されれば、自社でECモールを手掛けることも一つの選択肢」と語る。

三菱東京UFJ銀が考えているのは、商流全体をとらえた取り組み。銀行はこれまで、商品購買の最終段階である「決済」のみを担ってきた。しかし客は、決済に至るまでに、商品についての情報収集、比較検討、商品選び、店舗選び、配送手段の選択と、さまざまな行動をとる。そうした商流全体にかかわる情報提供を銀行ができないか、検討している。決済に至るまでの顧客サービスを小売業者などが囲い込んでしまえば、決済もその業者にとられてしまう可能性がある。

ただし、商品に関する情報の提供は、銀行よりECモール事業者など小売業者のほうが得意なはず。また、ECモールの市場は2013年時点で約11兆円まで拡大しているものの、すべての商取引金額に占める割合はまだ4%弱。三菱東京UFJ銀自身がECモールを手掛けるよりも、ECモール事業者と連携していく中で独自の価値を提供し、決済や融資などの金融分野は譲らない、という戦略を描くのではないかとみられる。

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