メガバンクのあり方を「人工知能」が変える日 異業種の金融分野侵食に増す危機感
みずほ銀行は個人業務部にインキュベーション室を設置し、5~10年後を見据えた新しい銀行サービスを生み出そうとしている。7月からは、店舗で接客ロボットの試行を開始する。三菱と同様、仏アルデバラン社製のロボットだが、こちらは「Pepper(ペッパー)」。吉本興業と組んで開発しており、関西弁を話したり、クイズをしたり、エンターテインメント性を高めている。
お得な情報の提供や声かけをして集客するとともに、金融小話などを楽しく話して待ち時間を忘れさせ、商品紹介やクイズで金融商品に興味が湧くようにし、窓口やスマホのアプリなどに誘導することを狙っている。
さらに、米IBMの人工知能型コンピューター「ワトソン」を活用し、コールセンターの顧客対応を、より正確にスピーディにすることにも取り組んでいる。ワトソンには推論や学習を行う能力があり、推論で回答を導き出したり、過去のやりとりを学んで最適な回答にたどりつけたりする。
現在、4席にワトソンを備えた端末を導入。顧客からの問い合わせとオペレーターの回答を、音声認識システムを通じてテキスト化。この質問にはこうやって答えればいい、といったことを学習している。今夏をメドに数百席ぐらいに導入し、学習速度を加速させる方針だ。「ゆくゆくはワトソンだけで基本的な顧客の問い合わせに対応できるようにすることで、オペレーターがさらに高度な応対を行っていくようにしたい」。みずほ銀行インキュベーション室の金子慎太郎参事役は語る。
人工知能で行内業務効率化も
三井住友銀行も「ワトソン」を活用したコールセンター業務の品質向上に取り組んでいる。2014年9~12月に技術検証を終え、現在はシステム構築中。2016年中には約600席あるコールセンターの全席にワトソンを導入していく。さらにワトソンを使って「行内業務を効率化することも考えている」(三井住友銀行システム統括部の江藤敏宏副部長)。
銀行には、さまざまな事務、手続き、規則、マニュアルなどがある。それらについての照会が、営業店の現場から本部に対して頻繁に寄せられる。たとえば、金融商品の販売にあたって、このような販売方法はコンプライアンス上、問題がないかどうか、といった内容だ。
こうしたさまざまなルールをワトソンに学ばせ、ワトソンが回答できるようにすると、事務効率は大きく改善する。営業店もすぐに回答が得られるので、営業効率が向上する。海外拠点が増えているので、海外からの問い合わせに対しても、すばやく回答できるようにする。
メガバンク3行が加速するICTの活用だが、決済などの牙城を異業種の脅威から防御し、金融サービスの顧客満足度を高めるには、開発の一段のスピードアップが求められる。
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