経済損失3.5兆円!「睡眠時無呼吸症」の裏側

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夜間の長期運行が多いJR貨物も、すべての機関車にエマージェンシーブレーキを装備している。運転士が1分以上何も操作しなければ、警告のブザーが鳴り、5秒以内に急停止するものだ。また、後退検知機能が付くATSも導入している。ソフト面では、運転手や運転士がSASにかかっているかどうかをチェックし、患者と判明した場合にはすみやかに治療させる必要がある。

これにいち早く取り組んだのは、全日本トラック協会だ。道路交通法第66条では「何人も、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれのある状態で車両等を運転してはならない」と規定しており、さらに2014年の法改正によって、道路交通法施行令第33条の2の3第3項に「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」が付け加えられ、SASにより正常な運転ができないドライバーは業務に就くことはできないからだ。

そこで全日本トラック協会は、2005年度からSASスクリーニング検査を補助事業とし、加盟社のドライバーに第1次検査の費用(500円を上限)と第2次検査の費用の半額(2000円を上限)を助成している。

またJR貨物では、2007年から運転士全員に3年に1度の検査を義務付けており、第1次検査も第2次検査も、その費用は会社が負担する。第2次検査で異常が見つかれば、軽度の場合はマウスピース、中度あるいは重度の場合はCPAP(シーパップ/経鼻的持続陽圧呼吸療法)、そして重度の場合は気道をふさぐ場所を取り除く外科手術というように、症状に応じた治療が行われる。

マウスピースは高額

ただしこれらがすべてを解決するわけではなく、課題も多い。マウスピースはひと晩中口に装着するため、慣れるまで違和感がぬぐえない。また、自由診療で作るとなると非常に高額なものになる。

気道を膨らますために空気を送るCPAPでは、コンプレッサーとマスクが必要で、移動する際には持ち運ばなくてはいけないという煩雑さがある。もちろんJR貨物の場合、機器の持ち込みは義務とされ、宿舎についてもコンプレッサーを設置しやすいように、コンセントなどの配線位置も整えられている。

これらはいずれも衛生面に配慮しなくてはいけない。CPAPのマスクは毎日消毒しなければならず、マウスピースは食いしばることによってできる傷に、雑菌が繁殖しないようにする必要がある。またCPAPは在宅医療と見なされるため、月に一度の通院が義務付けられる。

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