「え? それだけ?」と驚かれるかもしれませんね。子どもはすでに文具を持っており、特に揃える必要もないのに、文具を揃えるとはどういう意味なのか疑問に感じると思います。
筆者は子どもたちの指導を始めて以来、35年が経ちました。近年は「中学生の勉強法」という講座も6年ほど行っています。そこでは中学生に勉強の方法を直接教えるのですが、ただ方法を教えるだけではなかなか行動を起こさない子もいます。
しかし、“あること”について話をすると、子どもたちはたちまち行動するのです。それが「文具を揃える話」なのです。
勉強のモチベーションがあがる
文具は一般的に、鉛筆やシャープペンシル(以下、シャーペン)、ボールペン、蛍光ペンという書くものから、付箋、ファイル、さらにはノートも含まれます。多くの子どもたちはすでにこれらを持っていると思いますが、どのようなものを使っているかによって勉強へのモチベーションが大きく変わるのです。
文具はただ使えればいいというものを選択するのではなく、「心がときめくもの」「疲れないもの」「触れていて嬉しいもの」「書きたくなるもの」「使いたくなるもの」を選択します。
例えば、ソファを買うときに、デザインを重視するという選択があります。見た目が大事と考える場合です。また、収納がたくさんあるとか、ベッドになるソファなど機能性を重視する考えもあります。しかし、ソファをいつも座るために購入するとしたら、座り心地の優先度は高くなると思います。
ずっと座っていたいソファもあれば、長時間はリラックスして座れないソファもあります。座ることはできるけども、ずっと座っていると疲れるソファであれば、やがて座らなくなる可能性もあります。
機能性、デザイン性、快適性の3つ全てが満たされ、コストも問題なければ文句なしですが、どうしてもそこには選択の優先度が発生することでしょう。
文具の場合も同様に機能性、デザイン性、快適性があると思います。例えばシャーペンを購入する場合、書ければいいという子もいれば、デザインを重視する子もいます。しかし、快適性については重視しない傾向にあるのです。つまり、「書いていて疲れないシャーペンを使うほうが、勉強していても疲れるまでの時間が長くなる」ということです。
疲れというのは、無意識に発生するもので、その疲れの原因の一つがシャーペンにあるとは子どもは思っていません。まして親御さんも、考えもしないことだと思います。この子は集中力がないと判断してしまうことが一般的だからです。
大工さんの商売道具は、ノコギリやカンナなどの道具です。自分の使いやすいものを選び、それを丁寧に扱い、いつまでも使えるようにメンテナンスしていきます。子どもにとっての“商売道具”は文具です。
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