後発「タフト」は「ハスラー」を攻略できたか? 軽クロスオーバーガチンコ対決の意外な構図

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次の2022年は、ハスラーが70373台で7位、タフトが5万6861台で10位。差は若干縮まったものの、やはりハスラーが勝っている。そして、2023年は2月までの時点でハスラーが1万2791台、タフトが1万0853台。やはりハスラーが強い。

タフトというライバルが登場したとはいえ、約6年も早くデビューしヒットしていたゆえの知名度の高さが、有利に働いているのだと推察する。キュートな丸型ヘッドライトの顔つきも、人気の高さの一因だろう。タフトにはまだない、初代モデルからの代替え需要もあるはずだ。

とはいえ、その差は圧倒的というほどではない。なにかのきっかけでひっくり返る可能性がある。それは、スズキ陣営もダイハツ陣営もわかっているのだろう。販売促進に効果の高い特別仕様車を、スズキは2020年11月と2022年5月に、ダイハツは2021年5月、2022年9月に発売しているのだ。

ハスラー「J STYLE II」(写真:スズキ)
タフト「G“ダーククロム ベンチャー”」(写真:ダイハツ工業)

こうした競争は、当然ユーザーにもメリットがある。特別仕様車は、通常グレードではない装備やボディカラーが採用されていたり、充実装備で割安感があったりするものだ。

たとえば、ハスラー「J STYLE II」なら、専用2トーンボディカラーに加えて、インテリアトリムにも専用色を採用。さらに、フルオートエアコンに搭載される「ナノイー」を「ナノイーX」へとバージョンアップするなどしている。特別仕様車は、ユーザーにとってもおいしい商品なのだ。

デリカミニ登場でさらに市場は過熱する?

自動車市場とはおもしろいもので、ライバル関係にあるクルマが誕生すると、その市場全体が大きくなる傾向があるのだ。だから、ハスラーとタフトには、これからもどんどん競争していただきたい。それがハスラーにとってもタフトにとっても、そしてユーザーにとっても良い結果につながるからだ。

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本来は「売り手/買い手/世間」の三方に対して使う言葉だが、この2車とユーザーに対して“三方よし”とあえて言いたい。そんな、状況にあると言える。

スライドドアのスーパーハイトワゴンがベースと少々、趣は異なるが、2023年5月に発売が予定され受注が好調だという三菱「デリカミニ」も加われば、軽クロスオーバー市場はさらに活性化するかもしれない。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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