大阪の名門シティホテルが不動産投資ファンドに譲渡された。運営元のロイヤルホテルの厳しい懐事情、譲渡によってホテルはどう変わるのかに迫った。
「大阪万博に向けた改装のことを考えるとぎりぎりのタイミングだった」
リーガロイヤルホテル大阪(大阪市)を運営するロイヤルホテルは、1月に同ホテルをカナダ系不動産投資ファンドのベントール・グリーンオーク(BGO)に譲渡した。今後もロイヤルホテルは、同ホテルの運営を受託し、営業を続ける。ロイヤルホテル経営企画部の山中一茂副部長は譲渡という判断に至った背景をそう語る。
ポストコロナを見据え、ホテル業界がにぎわいを取り戻しつつある。
全国旅行支援の効果もあり、観光庁の宿泊旅行統計調査によれば、2月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)はコロナ前と同水準まで回復。訪日外国人も水際対策の緩和により、2月はコロナ前の56%まで戻ってきた。
宿泊人数が激減するという危機を乗り越えた各社であるが、ここにきてある問題に頭を悩ませている。インバウンド客獲得に向けた成長投資だ。
大阪は2025年に開催される大阪万博に向けて新規ホテルの開業ラッシュを迎えている。2021年には、マリオット系のW大阪、2020年にも同フェアフィールド・バイ・マリオット大阪難波などの外資系ホテルが開業した。
【2023年5月8日18時15分追記】上記の開業ラッシュについて初出時の表記を一部修正しました。
厳しい懐事情だったロイヤルホテル
一方で、リーガロイヤルホテル大阪は老朽化が進んでいた。「2025年の大阪万博を目指して外資系などいろいろなホテルが進出してくる中で、改装をしないと取り残されてしまう」という危機感があったと山中氏は言う。ハード面で差をつけられれば、観光客を取り逃がしかねない。
ロイヤルホテルは、コロナで資金流出が続いたことに加えて、借入金の返済が迫っており改装に資金を振り向けられない厳しい懐事情を抱えていた。
2023年1月に公表されたリリースによると、今回の取引で発生する売却益は150億円。リーガロイヤルホテル大阪の簿価が409億円(2021年度)であることを考えると、譲渡価額は560億円程度とみられる。加えて、BGOは135億円を投資し、同ホテルの大規模改修を行う。ロイヤルホテルの株式を33%取得し、代表取締役の選任なども行う予定だ。
不動産投資ファンドの関係者が、「藤田観光の太閤園売却より衝撃だ」と言うように業界には驚きが広まっている。
「東の帝国ホテル、西のリーガロイヤルホテル」と称されるように、リーガロイヤルホテル大阪は名門シティホテルの草分けとして知られている。1935年に大坂の政財界の支援を受け、大阪の迎賓館として開業。その本丸を売却することとなったのだ。
衝撃が広まる一方で、「売却は当然のことだろう」(あるシティホテルの財務担当者)と冷静な意見もある。ロイヤルホテルの財務状況を見れば、いかに逼迫した窮状にあったかが一目瞭然だからだ。
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