不貞相手への慰謝料請求が欧米で認められない訳 貞操は法的にみればあくまで配偶者間の約束

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さて、第三者不貞慰謝料請求事件の慰謝料額は、30万円から300万円くらいの間ですが、一般的には、100万円ないし200万円といったところでしょう。私自身は、この類型の事件ではほとんど和解で終えていました。

当事者本人や証人の尋問についても、書証として出ている陳述書の範囲をまずは出ないので、「やってもいいけれど、あなたに対する相手方の反対尋問を始めとして、かなり傷付く場面もありえますよ」などと説明をすると、あえてやりたいという原告はあまりいませんでした。

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私は、和解には節度を保ち、人証(証人や当事者本人の尋問)は当事者が求めれば必ず聴くという方針の裁判官でしたから、こうした事態は例外に当たります。しかし、弁護士たちも私のこうした方針に異を唱えず人証調べ前の和解に協力的であったのは、やはり、この問題に関しては請求を認めない消極説にも理があると、心のどこかで考えていたからではないかと思います。なお、原告は、夫、妻ほぼ半分ずつくらいでした。

もっとも、消極説をとっても、第三者が原告に執拗ないやがらせを行うなどの違法行為があった場合には、そのような行為自体が不法行為になるのはもちろんです。私が手がけた事件の中にもそういうケースはあり、和解金額を大きくしました。

とはいえ、判例・実務は認めていますから、この請求を行いたいと考える方はいると思います。そういう方におすすめしたいのは、誠実な弁護士に委任して、可能なら、訴訟にせずにそれ以前の話合いで解決する道を選ぶことです。特に、現在の婚姻関係を継続したいのであれば、そうした方法で解決するほうが、法廷に持ち出すよりも、長い目でみればベターな結果が得られるのではないかと思います。

瀬木 比呂志 明治大学教授・元判事

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せき・ひろし / Hiroshi Seki

1954年、名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業。1979年から裁判官。2012年明治大学教授に転身、専門は民事訴訟法・法社会学。在米研究2回。著書に、『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(第2回城山三郎賞受賞)『民事裁判入門』(いずれも講談社現代新書)、『檻の中の裁判官』(角川新書)、『リベラルアーツの学び方』『究極の独学術』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『教養としての現代漫画』(日本文芸社)、『裁判官・学者の哲学と意見』(現代書館)、小説『黒い巨塔 最高裁判所』(講談社文庫)等がある。

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