友だちを「推す活動」に若者たちがハマる深い理由 広がる「推し活」の知られざる変化

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もちろん、スマホやSNSやネットがない時代に比べ、その断絶の程度は少しだけ軽減されたのかもしれません。

しかし、やはり、たくさんの人間関係を経験した後にコロナがやってきた中高年世代と、まだクラスメートくらいとしか人間関係を構築した経験がない若者たちでは、コロナによりリアルな人間関係が断絶された影響の程度が大きく異なります。

事実、オンライン授業やテレワークばかりで、大学で友人ができなかったり、会社の同期や先輩や上司と深い人間関係が築けないという不満をたくさんの若者たちから聞きます。

「僕、一生彼女ができないんでしょうか」と大学生から何度も相談を受けました。

もちろん、「絶対そんなことないよ!」と力強く否定しておいたものの、彼らの人間関係に対する不満や不安が大変大きいものであることを強く実感しています。

新たなロスジェネ世代の人間関係の再構築を応援したい

そうした状況下、今、Z世代の間で「友だち推しごと」が流行り始めています。

これまでの「推し」はあくまで、自分とはある程度距離の離れた対象に対して行うものでしたが、コロナで人間関係が断絶されてしまった今、Z世代の若者たちは本来身近な存在であるはずの友人に対して「推し活」を行うようになっているのです。それだけコロナによって、友だちとの関係が遠くなってしまった、ということなのだと思います。

人間、若いうちはやはり「リアルな人間関係」によって成長する側面が大変大きいので、彼らに関わる全ての中高年は、コロナが落ち着きつつある今、過去を取り戻すくらい「効果的なリアル人間関係の場」を設けてあげる必要があります。

同時に、若者をマーケティング対象とする企業は、若者の従来の「推し活」グッズや場を設ける手法に加え、この新たな推し活である「友だち推しごと」も理解・応援し、マーケティング施策に組み込む取り組みをするとよさそうです。

業界の垣根を越え、このコロナ禍によって人間関係が失われた「新たなロスジェネ世代」の人間関係の再構築を応援していきたいものです。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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