イオンのパート待遇「大胆改善」が映す相当な覚悟 パート責任者の時給を正社員と同等に、全体も向上

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イオンの業績

イオンはグループとしてデジタル化を推進しているが、デジタル化といっても、結局は従業員の1人ひとりの頑張りに依存している。女性が非正規として正社員の穴埋めになってきたが、これからは待遇面も大幅に見直す必要があるのだ。

一般的に、企業経営者は人材難が深刻化しなければ賃上げしない。株主にとっても、雇用できるならば、賃上げしないほうが合理的だ。しかし現在は深刻な人手不足の状況だ。いかに職場と処遇の訴求性をあげるべきかが課題といえる。それを証拠に先日、イオングループがパートで働く40万人の時給を7%引き上げると発表した。

日本では2023年のインフレ率が3~4%と予想されている。だから各社も賃上げの上昇幅もそれに揃えようとしている。しかし、パート社員は同時に自社の顧客でもある。そのパート従業員にイオンはインフレ率を超える時給のアップを果たすのだ。

イオンリテールは正社員が約2万5000人、非正規が約10万人もいる。それだけ社会的責任が大きな企業といえる。イオン全体のパート従業員は全国で働く小売業の少なからぬ比率を占めるとされる。イオンのこの決断は業界全体に大きな影響を与えるだろう。

不当な解雇・雇い止めにも配慮を

可能ならば、不当な解雇に対抗できる権利についても正社員と同等の条件を付してほしいと私は思う。パート社員で報酬が向上しても、正社員と異なってすぐに解雇、雇い止めされる可能性があるのであれば不安は払拭されない。個人の希望に応じて働き続けられる職場が実現したら望ましいだろう。

また日本型の人材流動化が進むとしたら、パート従業員のように正社員と同等条件でありながら、正規従業員とは違った時間で働く方式なのかもしれない。パート従業員もジョブ型で働くイメージだ。

私は小売店が1人ひとりの頑張りに依存していると書いた。イオンはその方向に舵を切った。しかし、もちろん答えは1つだけではない。徹底的な自動化やロボット化、IT化による省人化によって人材不足を乗り越える企業もあるかもしれない。イオンの大幅改善はこれから企業が人材に払っていく報酬の行方にさまざまな示唆や課題を投げかけている。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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