イオンのパート待遇「大胆改善」が映す相当な覚悟 パート責任者の時給を正社員と同等に、全体も向上
ここでイオンの決算状況を見てみよう(なお、これはイオンリテールのみの決算書ではなくイオン全体の決算書だ)。2022年2月期に収益は7兆6574億円で、経常利益は1743億円稼いでいる。立派な業績といえるが、収益比経常利益率は2.3%なのでけっして高いとはいえない。この費用のなかに「従業員給料及び賞与」の1兆382億円が入っている。
同業他社の状況を見てみよう。セブン&アイ・ホールディングスだ。彼らの同じ2022年2月期のデータでは、収益は8兆7450億円で経常利益は3586億円が出ており、収益比経常利益率は4.1%となっている。「従業員給料・賞与」は5648億円だ。
なお、単純に比較しても絶対的な意味はない、と把握しつつも、両社を比べてみる。収益にたいする従業員給料・賞与は下記の通りだ。
●イオン:13.6%
●セブン&アイ・ホールディングス:6.5%
繰り返すと、この単純な比較にさほどの大きな意味はもたせたくはない。セブンはフランチャイズなどで収益の構造が異なる。
普通に見れば、イオンは従業員のコスト比率が高いように見えるだけだ。しかし、私はこの高比率をさらに引き上げようとしている点に、イオンの相当な覚悟と決意を感じる。
イオンの待遇改善の意味
つまり、労働集約型のスーパーマーケットにおいては、人材の獲得が競争力の源泉なのだ。現場の売場づくりの優劣で店舗の売り上げが左右される。実際、私たちは雰囲気や店員の声かけで通う店舗を決めているのではないだろうか。
パーソル総合研究所は5年前の2018年2月に、「2030年には、7073万人の労働需要に対し、6429万人の労働供給しか見込めず、『644万人の人手不足』となる」というレポートを公表していた。これは圧倒的な不足だ。みなさんの職場で1割の人員がいなくなったら仕事が回るかを考えてほしい。
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