震災で見直しを迫られる製油所の過剰設備削減

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 本来、国内の石油業界は典型的な供給過剰構造にある。産業界や家庭の石油離れで国内需要は1999年度をピークに減少の一途で、直近は日量330万バレル(1バレル=0・159キロリットル)。一方、国内27製油所の精製処理能力は日量450万バレルで、適正稼働率を9割と想定しても供給能力が2割以上上回る。このため、元売り各社は精製販売マージンが細り、2009年度は軒並み大幅な実質赤字に転落。業界も危機感を募らせ、先陣を切って最大手のJXが昨年1年間で日量40万バレル相当の能力を削減。昭和シェルも昨年、京浜地区で一体運営する2製油所の一つの閉鎖を決めた。

さらに政府も業界の過当競争を是正させるため、10年度から新たな規制を導入。重質油分解装置の装備率という数値基準を課し、過剰設備の削減を強制的に促し始めた。この規制によって、東燃ゼネラル石油、コスモ石油については「一部製油所の閉鎖が避けられない」(石油業界担当アナリスト)とみられている。

石油業界が一斉に能力削減へと動き始めた矢先に起きた大震災。ある業界関係者はこう語る。「皮肉な話だが、業界が過剰な精製処理能力を抱えていたので、西日本から東日本へ製品を回すことができた。震災が3年後に起きていたら、燃料供給はもっと大混乱を来したと思う」。

国内の製油所は有事の際の安定供給を考えた場合、どれほどの余剰設備を持つべきなのか。そして、その維持コストは誰が負うべきなのか。今回の大震災は、日本の石油供給体制のあるべき姿についても大きな議論を呼び起こしそうだ。

(週刊東洋経済編集部 =週刊東洋経済2011年4月2日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

写真(c)google
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