FRBが利上げ再加速をする可能性が高まってきた 利上げペースを緩めた場合のリスクは大きい

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たとえエコノミストの予想がはずれても、予想した本人の信用が傷つく程度の影響しかない。だが、もしFRB議長の見立てがはずれると、その後のアメリカ経済に大きな影響が出ることになる。

実際、パウエル議長は2021年の前半まで「足元のインフレは一時的な要因によるもの」という見方に固執。結果的に金融引き締めへの転換が遅れ、その後の大幅なインフレを招いたと批判された。それだけに、今回の状況判断ではなおさら判断ミスは許されなくなっている。

足元の堅調な経済や株高で、アメリカでは先行きに楽観的な見方をする消費者が増えている。だが、今後インフレ圧力が再び高まれば、2月に「ディスインフレのプロセスが始まった」などとインフレ収束発言を連発したパウエル議長の姿勢は再び批判を受けることになる。3月に入ってからパウエル議長は「必要であれば利上げペースを加速させる用意がある」などと発言しているが、利上げを再加速させ、インフレを抑え込む可能性は決して低くない。

3月FOMCで、利上げ再加速はあるのか

すでに、セントルイス連銀のジェームス・ブラード総裁や、クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁など、タカ派とされるFRB高官からは、次回のFOMCで利上げ幅を0.50%に戻す選択肢を検討すべきとの意見も多い。

インフレがこの先どうなるのかを予想するのはそう簡単ではない。だが、実はインフレ懸念があらためて高まりそうな場合に、FRBがどのような行動に出るのかを予想するのは、それほど難しくはない。

というのも、しっかり利上げを行ってさえいれば、仮にその後にインフレがさらに進んだとしても、「われわれはしかるべき手を打っていた」との言い訳ができるからだ。だが、利上げを躊躇している間にインフレが進んでしまえば、その後は厳しい批判を甘んじて受けざるをえなくなる。

ここで気になるのは、昨年秋時点での、パウエル議長の以下のような発言だ。「利上げに関しては、行きすぎたものとなり、経済を必要以上に冷え込ませてしまうリスクと、不十分なものに終わり、インフレの加速を止められなくなるリスクの両方があるが、後者のほうがより大きなリスクを伴う」と、当時は積極的に利上げを進める理由を説明していたことだ。

もしパウエル議長がこの考え方を変えていないのなら、今回もやはり予防的に利上げペースを再び速める可能性は高い。議長はまた、このようにも話していた。「インフレが手を付けられなくなれば、もはや打つ手はない。だが、一方で景気が落ち込んでしまった場合には、われわれにはいろいろなツールがある。新型コロナウイルスの感染爆発直後の経済の落ち込みからの急回復が、まさにそのことを証明している」と語ったことだ。

前出のように、注目の次回FOMCは21~22日に開催される。はたして10日の2月雇用統計、14日のCPIなどはどうなるのか。もし、この2つの指標がともに強い内容であれば、利上げ幅が0.5%となり、今後継続の可能性まであると見ておきたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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