FRBが利上げ再加速をする可能性が高まってきた 利上げペースを緩めた場合のリスクは大きい
アメリカ経済の底堅さが際立っている。同国では2月以降、好調な経済指標が相次ぐ。
まもなく3月10日に2月の雇用統計が発表になるが、1月の同統計では非農業部門の雇用者数が前月比51.7万人増という大幅な伸びを記録。また失業率は3.4%と、1969年5月以来の低水準まで下がった。
1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で6.4%の上昇。前月からはわずかに伸び悩んだものの、やはり予想を上回る伸びを記録した。また生産者物価指数(PPI)も同6.0%の上昇と、予想を上回った。さらに、消費関連でも15日の小売売上高が前月比で3.0%増。2021年3月以来の衝撃的な大幅増だった。
経済指標に最も困惑しているのはパウエルFRB議長か
昨年はFOMC(連邦公開市場委員会)が4会合連続で0.75%の大幅利上げを決定するなど、積極的な金融引き締めを行ったことから、「2023年は景気が急速に悪化する」との見方が当初は強かった。
だが、足元の状況を見る限り、そうした気配はない。市場では急激な利上げで経済が急激に落ち込む「ハードランディング」懸念は消えたに等しく、FRB(連邦準備制度理事会)が今後少々の利上げを行っても景気の減速が見られない「ノーランディング」のシナリオまで浮上している。
すでに、債券市場は一連の強気の経済データに反応、同国の長期金利は一時急上昇した。すでに次回の3月(21~22日)は0.5%の利上げが有力。しかも、その次の5月(2~3日)でも利上げは終わらず、6月(13~14日)も利上げを行うとの見方が有力だ。
現在、政策金利は4.5~4.75%の水準だが、市場はターミナルレート(利上げの最終到達点)も、5.50~5.75%程度にまで引き上げられる可能性を織り込むようになってきている。
一方で、株式市場は金利高にもかかわらず、調整は限定的なものにとどまっている。こうした状況下でも弱気の見通しを崩していないエコノミストは多く、「利上げ効果が表れるのが予想より遅れているだけで、いずれ景気は急速に悪化する」としているが、足元で景気がこれほどまでに底堅く推移しているのかについては明確な分析ができていないというのが正直なところだろう。
とくにFRBがこれだけ積極的に利上げを進めてきたにもかかわらず、1月の雇用増が50万人を超える伸びを見せたというのは、特殊要因なども指摘されているとはいえ、当局にとっては謎としか言いようのない出来事だったのではないか。こうした状況に最もストレスを感じているのは、おそらくジェローム・パウエルFRB議長だろう。
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