日経平均の一段高を期待させる「重要指標」の改善 黒田日銀下での「金融政策変更」には要注意

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さらに、株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産にも注目したい。この業種は半導体(IC、メモリー)のほか、コンデンサー、水晶振動子、電子回路基板、コネクターなどで構成される、いわば広義半導体である。

1月の電子部品・デバイス工業は前月比マイナス4.2%と2カ月連続の減産となり前年比ではマイナス19.2%であった。2015年を100とする指数(振れを除去するために3カ月平均とする)は2022年3月に117.9まで上昇したものの、2023年1月93.0まで低下し、2019年平均(95.2)以下の領域に後退している。

日本企業が国際競争力を有する電子部品産業は、世界的なDX進展などによって構造的な需要増加の追い風を受けているはずだが2022年以降はシリコンサイクルの悪化に巻き込まれその勢いを失っている(この間、半導体製造装置も大幅減産)。

生産計画をみても電子部品・デバイス工業の生産は2月こそ前月比プラス11.5%と強いが、3月はマイナス12.3%と弱く、基調的な増産の気配は感じられない。コロナ禍で特需的な売れ行きを記録したノートPCやスマートフォンなどの需要減衰が効いており、先行きも下振れリスクは残存する。

もっとも、在庫調整の進展を窺わせる動きが出てきたことは朗報だ。1月の在庫水準(3カ月平均)は前年比プラス12.1%と相変わらずプラス圏にあるが、それでも2022年5月のプラス44.5%をピークに明確な縮小傾向にあり、過剰在庫の圧縮にメドが付きつつあることを示唆している。

日経平均と連動性ある「出荷・在庫バランス」は改善中

そして、より重要なことに、出荷と在庫の前年比の差分をとった「出荷・在庫バランス」(3カ月平均)はマイナス24.2%と、2022年5月に記録したマイナス41.0%から大きくみればマイナス幅を縮小しており、この間に製品需給の緩みが解消されつつあることを意味している。

出荷・在庫バランスがプラス圏に浮上すれば、広義半導体銘柄を中心に業績の底打ち期待が膨らみ、日本株を牽引すると予想される。

というのも、この電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと日経平均株価には、長期的な連動性が認められているからだ。この点、1月データは業績反転を先取りするという視点で好機にみえる。

もちろん欧米経済が高インフレによる混乱から抜け出せず、IT関連財の消費・投資需要が一段と落ち込んでしまえば、業績回復が遅れる可能性はある。だが、少なくとも現時点において最悪期脱出の兆候は明確化しつつあることは認識しておきたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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