コロナで疲弊「上毛電鉄」挽回狙うツアーの中身 運転・車掌体験会やライトアップ撮影会を開催

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このデハ101の車内で、上電の橋本隆社長が次のように話した。

「コロナ禍4年目となるが、いまだに回復の目途が立たない。さらに昨年4月くらいから電気代の大幅な値上げによって、1昨年の実績より約5割増しの負担となっている。鉄道収入の補填をしなくてはならない。そんな中、定期外の私たちの商品に何があるか。デハ101や2013年から始めている大胡車庫での運転体験、この2つの看板商品を、観光庁の事業でブラッシュアップをかけて、少しでも鉄道収入の補填に繋げたい」

この話には昨今のローカル鉄道が抱えるものが滲み出ており、深く考えさせられる。

また、モニターツアー参加者である花上嘉成氏(東武博物館・元名誉館長)は、「上電さんは本当に一生懸命やっている。利用者が減る一方で困った状況だけれども、なんとかしたいと思っている」と話した。

思い出の車両を運転する貴重な体験

デハ101は、ゆっくり上電の車両基地がある大胡駅まで向かう。車内では、ツアーの担当者から説明を受け、今回のメインである運転体験の講習を受けた。鉄道のプロが、とても分かりやすく教えてくれる。

その後、700形の運転と車掌体験があり、本物の車両でマスコンとブレーキ操作が楽しめた。井の頭線で運行されていた時は、よく乗った車両だという人も多いであろう。思い出の車両を動かすと言うのは、なんとも貴重な体験である。

車掌体験では、車内アナウンスもできる。スピーカーを通して聞こえる自分の声に、少し違和感がある。実物の電車を動かした後は、サイクリングだ。線路上を走行する「軌道自転車」というものに試乗させてもらえる。線路や設備の保守点検用の移動で使われているようだ。乗ってみると、軽やかで楽しい。

デハ101と並んで、大胡車庫の貴重な顔といえば、凸型電気機関車「デキ3021号」である。こちらも今回、運転体験ができた。もともとは、東急電鉄の長津田車両工場で、入換機として使用されていた機関車である。こういった機関車を運転する体験も、ほかではなかなか味わえない。

また、上電本線上の運転体験ができる「シミュレーター」もあり、これも体験できる。車両の運転特性や、走行音などもリアルに再現されている。ほかにも記念として運転体験の修了証や、お土産で前橋市の老舗銘菓とのコラボ商品や地元で造られた日本酒なども配られた。

盛りだくさんの内容で時間はあっという間に過ぎていき、最後は車両基地内に700形、デハ101、デキ3021号を平行に並べての「ライトアップ撮影会」だ。車両に照らされる照明と、デハ101の車内灯が幻想的で美しい。

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