外資系企業を悩ます「フライジン」、大震災と原発事故で脱出外国人が続出、機能不全に
東日本大震災と福島第一原発の事故は、日本の外国人コミュニティにも大きな衝撃を与えている。16日にはフランス政府が東京在住のフランス国民に国外退避か国内移動を勧告、米国務省も同日、都内の大使館職員家族に自発的な離日や国内他地域への移動を認め、日本国内にいる米国人にも出国の検討を促すなど、「日本脱出」モードが広がりつつある。
外務省の調査では、23日時点で在京大使館のうち25カ国が一時閉鎖。スイスやドイツ、オーストリアなどのように大阪、神戸、広島など西日本に大使館業務移転した国もある。さまざまな情報が錯綜するなか、独自の(場合によっては勝手な)判断で職場を放棄する外国人が増え、外資系企業のなかには半ば機能不全に陥るケースもあるようだ。
「妻がパニック状態にあるため、しばらく海外オフィスで勤務したい」「体調がすぐれないので在宅勤務にしたい」--ある米国系金融機関の人事担当者は、日本採用の外国人スタッフが、メール一通残して突然出社しなくなる、あるいは別の国に一時避難する、という事例の多発に頭を抱えている。
なかには、多くの部下を抱える部門長が出社を拒否し、それに日本人部下が振り回されたり、業務の遂行に支障が出たりする事態も起きているという。「海外では地震や原発被害が過大に報道されていることもあって、そうした外国人スタッフの行動は、本社や他の海外オフィスの同僚からは同情を集めやすい」と同担当者はため息混じりに言う。
別の欧州系金融機関では、日本人以外の外国人スタッフはほとんど国外退避し、海外との電話会議やメールで指示を仰ぐありさまだという。
「取引先の邦銀担当者からはなかなか理解されない。『うちだったら這ってでも出社しろ、といわれているのに』と」