導入迫るマイナンバーで何が便利になるのか 認知度は3割、知っておくべきデメリットも

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2016年1月からは、ICチップを搭載した個人番号カードの無料配付が始まる。総務省は、2016年1~3月に全国民の約1割、1000万人がカードの受け取りを申請すると見込んでいる。2015年度の政府予算は、1000万枚のカード代として、約220億円を計上している。

単純計算で、国民全員にICカードを配るのに約2000億円かかる。加えて、システム関連費用として2700億円を投じるとみられる。

メリットの実感は2017年7月以降か

しかし、これだけの税金を使っても、マイナンバーのメリットはすぐには実感しにくい。役所への申請の際に住民票や課税証明書などの添付書類がマイナンバーによって不要になるのは、市区町村同士の情報連携がスタートする17年7月以降になるからだ。

野村総合研究所の梅屋真一郎・制度戦略研究室室長は「制度がスタートしても、いきなり目に見える劇的な効果は出てこないだろう。カードを国民のほぼ全員に配り終えるのに最低数年はかかるとみられているが、国民の半分が持つようになれば、便利になり始めてガラリと変わる」と制度の将来性に期待を込める。

一方、マイナンバー制度に対する懸念は、依然として残る。番号は住民票記載の住所に通知されるが、事情があって現住所と住民票の記載とが異なる人も存在する。

情報問題対策委員会の委員を務める清水勉弁護士は「ドメスティックバイオレンスやヤミ金融などに追われ、住民票記載の住所で暮らしていない人が相当数存在する。もし番号がなければ働くことはできないというのであれば、マイナンバーがきっかけになって、そういう人を裏の世界に追いやってしまう危険性がある」と指摘している。

「週刊東洋経済」2015年4月11日号<6日発売>「核心リポート03」を転載)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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