心臓血管医が解説「大動脈解離から身を守る方法」 肥満のある40~50代男性と高齢者がリスク大

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命に関わるというイメージのある大動脈解離とはどういう病気か、専門家に話を聞きました(写真:nonpii/PIXTA)

落語家でタレントの笑福亭笑瓶さん(66歳)が2月22日午前、大動脈解離のため死去した。笑瓶さんは2015年12月、千葉県のゴルフ場で同じ病気で倒れ、ドクターヘリで搬送されて治療を受けていた。

大動脈解離とはどのような病気なのか、予防法はあるのか、実際になってしまったときの治療法はあるのか――。大動脈解離治療のスペシャリストで、川崎幸病院院長で川崎大動脈センター創設者の山本晋医師に聞いた。

体の中でバリバリっと裂けるような鈍い音

今回、亡くなられた笑瓶さんが大動脈解離を初めて発症した約7年前の緊迫した状況は、認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)のインタビューでご自身が語っている。

「2015年12月29日、事務所の後輩の神奈月君と千葉県でゴルフをしていました。グリーンでピンをカップにさそうとしたときに、体の中でバリバリッと裂けるような鈍い音がして、今まで感じたことのない激痛が走ったんです」(認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワークHPより)

同インタビューでは、「痛みでまっすぐに立てなかったので支えてもらって、体をくの字にして何歩か歩いたところで倒れました」とある。その後、ゴルフ場でプレーしていた人に退避してもらい、芝生の上にドクターヘリが着陸。笑瓶さんは病院に運ばれ、ICU(集中治療室)に入り、処置を受けたと記されている。

結局、手術はせず、保存療法で2週間後の年明け1月14日に退院した。笑瓶さんは、「(以前は)チェーンヘビースモーカーでしたが、これを機にやめました」と語っている。

“死と隣り合わせの病気”というイメージがある大動脈解離。厚生労働省の人口動態統計調査によると、「大動脈瘤及び解離」の死亡者数は2021年では1万9351人(前年1万8795人)だった。2000年は8214人だったので、約20年で2.4倍近くに増えている。

「かつては高齢者に多い病気で、70代ぐらいの方にみられましたが、近年は当院の入院患者でみれば、高齢者が発症する例と、30~50代が発症する例とで、二極化しています。特にこれまでの治療経験でいえば、高齢者以外では“肥満のある、40〜50代以降の男性”に多いという印象があります」と山本医師は言う。

大動脈は、心臓から送り出された血液が全身へと流れていく通り道であり、血液量が非常に多い太い血管。心臓の左心室(体の正面から見た心臓の右側)を起点にまず上に向かい、Uターンして背中側に回りながら脳や腕に分かれていく。

大動脈の血管を輪切りにすると、内膜、中膜、外膜の3層になっている。大動脈解離は、内膜に入った亀裂から中膜に血液が入り込むことで、血管の層が分かれ、全身の臓器に血液が行き渡らなくなる病気だ。

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