アインシュタインの「余命を延ばした」手術の全容 偉大な科学者の動脈瘤を「セロファンでくるむ」

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外科手術
1~2年とされたアインシュタインの余命を7年に延ばした(写真:mits/PIXTA)
多くの人を病から救う外科治療。かつては麻酔や消毒もなく、外科医が手洗いすらしない時代もあったという。そこから数々の試行錯誤を経て、知見が蓄積され、現代医療につながるわけだが、その過程では世界的な著名人たちの手術事例も大いに活用されている。かの有名な理論物理学者、アルベルト・アインシュタインも例外ではない。彼の余命を大幅に延ばしたと考えられた、手術の例をご紹介したい。
現代医療の礎となった著名人の手術がつづられた書籍『黒衣の外科医たち 恐ろしくも驚異的な手術の歴史』(オランダの外科医、アーノルド・ファン・デ・ラール著)より一部抜粋、編集してお届けする。

現代外科学では「まさかと思うこと」が起きる

現代外科学は絶対的なものではない。確率の科学であり、可能性を計算する。

たとえば胆囊炎(胆石が動いて胆囊管をふさいで炎症が起きること)にかかると発熱する可能性が高いが、熱がある人が胆囊炎を発症しているかというと、その可能性は低い。結局のところ、胆囊炎よりも発熱のほうが頻繁に起きるからだ。発熱の他に、胆囊炎によく見られる症状や徴候があれば、胆囊炎を発症している確率が上がる。さらにもう1つ典型的な症状なり徴候なりがあれば、胆囊炎と診断できる確率がさらに上がる。

ある病に典型的な症状または徴候が3つ組み合わさることを、三徴候と呼ぶ。胆囊炎の三徴候は、発熱、上腹部から背中にまで広がる痛み、マーフィ徴候(呼吸するたびに右上腹部の痛みが増す症状)だ。

三徴候は具体的だ。言い換えると、3つの条件がそろっている場合は、患者がその病に罹っている可能性が高いと診断できるということだ。だが、三徴候はそれほど「感度」が高くない。つまり三徴候が完全にそろっていなくても、その病に罹っていることがある。

血液検査、X線、超音波スキャンといった補助的な検査には、それぞれ独自の感度と特異性があり、検査結果を解釈するときに考慮する必要がある。手術の決断(手術適応)ですら他の症例との比較であり、あくまで可能性に基づくものだ。手術が成功する確率は、何もしない場合のリスクと比較して評価する。

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