父親は子どもに愛情を示さなかった。人前では「いい父親」を演じるが、ふだんはつねに自分の都合を優先する。フミさんが高校生の頃に手術を受けたときは、世間体を気にして病院を訪れたものの、待ち時間にイライラして怒鳴り散らした。
彼女が市販薬でオーバードーズをした際には、「自分もやったことがある、大丈夫だから一人で病院に行け」と怒鳴りつけ、彼女が「死にたい」と叫んでいるときには、「もう話は終わったか?」と返し、飼い犬のところへ行き、犬を撫でた。
「巧妙にやってくるので、私が悪いのかな、母親が悪いのかな、みたいにわけがわからなくなって麻痺してくる。ほかにもたぶんやられたことがあるんですけれど、記憶がごちゃごちゃになっていて、忘れているところもたくさんあると思うんです。
精神的なものが主なんですけれど、身体的な虐待で、ものを投げたりされたことも。殴られたり、性的虐待も覚えていないだけで、されている可能性はあって」
なお、後から送ってもらったフミさんのメモ書きには「性犯罪にあった」という記述も2カ所にあった。加害者や時期など、具体的なことは書かれていない。細かい記憶は失われているのかもしれない。
フミさんは、場面緘黙の症状でコミュニケーションがうまくとれなかったため、学校ではいじめを受けていた。いつもつらかったが、周囲からは幸せに見えたらしく、「うらやましい」「恵まれている」と言われ続けることにも、深く傷ついていた。
「幸せなのに」警察官の言葉に怒りで錯乱
精神状態がひどく悪化したのは、いまから7年ほど前だった。 彼女が高校生だったときのことだ。初めて家出をした際に出会った警察官は、彼女の話に何時間も耳を傾け、とても親身になって対応してくれた。だが、二度目の家出の際に当たった警察官は真逆だった。
「母親に殴られている子どもだっている。あなたは幸せなのに、両親にひどいことを言って、警察を何回も出動させて」などと説教をして、彼女を責め立てたという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら