増設か拡幅か、首都圏で続く「ホーム改良」の違い 武蔵小杉は下り側に新設、渋谷は1面に統合

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実際に改良後の武蔵小杉駅ホームを見てみると、上りホームはラッシュ時に対応できる広さが確保され、従来のように反対方面の利用者を気にしなくて済む安心感があった。しかし2月上旬時点では柵はなく、仮のロープと警告を示した表示が設置されていた。新設の下りホームは上りホームよりも狭い。上りのほうが朝ラッシュなどに乗客が集中することを考えると、これでいいのだろう。

同様の形でホームを増設した例は、この数年だけでいくつもある。

地域住民の急増などで2000年の開業時と比べて大幅に混雑が激しくなった都営地下鉄大江戸線の勝どき駅は、2019年2月11日から従来の島式ホームを両国・飯田橋方面行き専用とし、新たにホームを増設してこちらを大門・六本木方面行き用として、方向によってホームを分離した。

スポーツイベントなどで利用者が多かったJR東日本中央・総武緩行線の千駄ケ谷駅も、島式ホームにもう1つホームを増設した例だ。2020年、東京オリンピック・パラリンピックの開催(実際は2021年になったが)を控え、1964年五輪の際に設置された臨時ホームをベースとして南側にホーム1面を増設し、三鷹方面行きと千葉方面行きの乗り場を分離した。従来の島式ホームは、「島」を保ったまま千葉方面への列車が使用しており、乗り場と反対側には柵が設けられている。

既存ホームへの影響抑えて改良

もともとあった臨時ホームを活用した例としては、山手線の原宿駅もある。かつての木造駅舎は魅力があったものの、駅舎だけではなくホームも手狭になっていた。同駅は島式ホームだったが、従来から明治神宮の初詣に対応するための臨時ホームが西側(明治神宮側)にあった。こちらも東京2020大会を前に、臨時ホームをベースとした新ホームの使用を開始し、外回りと内回りの乗り場を分離している。

山手線原宿駅
山手線原宿駅は内回り・外回りのホームを分離、駅舎も新しくなった(写真:momo/PIXTA)

このような工事はほかの駅でも進んでいる。東京メトロ東西線の南砂町駅は、島式ホームに加えて現在のホームの南側、中野方面の線路の向かい側にホーム1面と線路を増設することになっている。これによってホームが増えるとともに中野方面行きの線路が2本になり、混雑の激しい朝ラッシュ時に交互発着ができるようになる。

混雑緩和のためにホーム改良をする場合、既存の島式ホームにもう1面増設する形は工事がしやすいといえる。新設のホームは線路の外側に増設すればよく、既存のホームの工事はほとんどせずに済むためだ。島式ホームを拡幅しようとすれば、上下線の間隔を広げ、さらにホームを拡幅するという大がかりな工事が必要になる。とくに地下鉄の場合は困難だ。

だが、その実例もある。山手線の渋谷駅だ。今年1月7日から8日にかけて線路切換工事を行い、これまで外回りと内回りで別々だったホームを統合して島式ホームにした。

山手線渋谷駅島式ホーム
内回り・外回りが1つのホームになった山手線渋谷駅(写真:JR東日本提供)
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