マック「PUFFY風」新CMに苛立つ人が見落とす変化 「アジアのジューシー」CMは"安易な劣化版"なのか

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CMには若者世代に人気の西野七瀬さん&飯豊まりえさんが起用されている。Tシャツにジーンズのファッションは、まさに当時のPUFFY風(画像:マクドナルドの公式YouTubeより)

批判的な意見を示しているのは、90年代のPUFFYをリアルタイムで体験している世代のようだ。しかしながら、本CMに起用されているタレント2人を見ると、広告のメインターゲットは、Z世代であることは自明である。

したがって、公正に評価するうえでは、「PUFFY世代」だけでなく、Z世代がこのCMをどう受容しているかを知っておく必要がある。

筆者が、都心の大学2、3年生16名(筆者の授業の教え子たち)に感想を聞いてみたところ、興味深い意見が得られた。意見はさまざまだったが、大まかな傾向としては、下記のようなところだ。

1. 多くの大学生は、PUFFYも、原曲(「アジアの純真」)も知っている
2. ただし、PUFFYも90年代カルチャーも詳しく知っているわけではなく、上の世代が抱いているような「違和感」はほとんどない
3. 「安っぽい」、「お金がかかっていなさそう」という印象は多くの学生が持っているが、この点ついて、ポジティブ、ネガティブの両方の評価がある
4. キャスティングに違和感を示す声はなかった(ネット上では、「PUFFY自身を起用すべき」、「若手を起用するならもっとメジャーなタレントを起用すべき」という意見が出ていた)
5. 広告としての評価は、「食べたくなった」「おいしそう」という感想がある一方で、「(楽曲が長いので)スキップしたくなった」という声もあり、賛否両論が見られた

要するに、ネット上に出ているような「違和感」はZ世代にはほとんどなく、独立した広告、あるいはコンテンツとして素直にCM受容している――ということになる。

「中途半端なPUFFYオマージュ」なのか?

パッと見て、「アジアの純真」→「アジアのジューシー」のダジャレに、中途半端なPUFFYオマージュを乗っけただけと思う人もいたようだが、大学生の感想から見直すと、このCMは「Z世代」をターゲットとするマーケティング戦略に基づいて、制作・配信されていることが理解できる。

上に挙げた、5つの項目と対照させながら見ていこう。

まずは1(PUFFYの知名度)、2(90年代カルチャーへの認知)についてだが、実は今の若者層と90年代カルチャーとの親和性は高い。Z総研2022年上半期トレンドランキングでは、流行った言葉2位に「ぎゃる」、流行ったコト・モノ2位に「平成ギャル」、3位「ルーズソックス」がランクインしている。

90年代の音楽が好きな大学生も一定数いる。大学生と日常的に接している身の肌感覚としては、「平成ギャル文化」を取り入れている学生、90年代の音楽を好んでいる学生は、全体の1割程度といったところだが、「コア層」の周辺には、親しみを感じている人たちは一定数いるはずだ。

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