ゼロコロナ政策が変えた中国出稼ぎ労働者の意識 出稼ぎ組が職場に戻らず中国の優位性損ねる恐れ

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中国は約3年続けた「ゼロコロナ」政策から経済がすぐに立ち直ると見込んでいる。だが、中国各地の製造拠点には傷跡が残ったままだ。厳格なロックダウン(都市封鎖)などで新型コロナウイルスを徹底的に抑え込むというこの政策は破壊的だった。

中国最大の衣料品卸売市場がある広東省広州市の中心部には出稼ぎ労働者がなかなか戻ってこない。仕事の空きがあるという段ボール製の看板を掲げている人もいれば、働いてくれそうな相手に、条件や福利厚生について数分間でいいから話を聞いてほしいと頼み込んでいる人もいる。こうした人々は工場経営者や採用担当者だ。

長期にわたるロックダウンや工場閉鎖で給料が支給されなかったこと、さらに厳しいコロナ規制への反発で激しい抗議活動が起きたことが働き手の心理に影響を及ぼしている。

工場経営者や採用担当者が働き手を探す(広州市、2月9日)Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

春節連休の帰省から戻ったのは10人だけ

広州の海珠区は昨年遅く、約1カ月封鎖された。同区で人材集めをしているタン・ニンさんは1週間で1人も働き手を確保できなかったと言う。彼女が10年余り働いている衣料品工場には今年の春節(旧正月)前、30人余りの従業員がいたが、春節連休恒例の帰省から戻ったのは10人だけだった。

タンさんは2月に入ってからのインタビューで、従業員の気持ちは分かると話した。「故郷から遠く離れた大都会にいて、一生働いても家を買えず、共同トイレの古い小さな部屋に住み、1日12時間働いている。唯一の目標はできるだけ稼いで、できるだけ貯金することだ。そこにロックダウンが始まった。いつまで無給か全く分からなかった」という現実を語った。

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