専門医が解説「発達障害かも」と思う人がすべき事 「悩みが当てはまる=発達障害」ではない

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不注意の特性が強い人が、必ず苦労するわけではないんです。環境によって、苦労の度合いは変わり、発達障害はその度合いをふまえて診断されます。 

不注意が強くて困っていればADHDと診断されることもありますが、同じ程度の不注意があっても、快適に過ごせていれば診断されない可能性もあります。そういう意味で、発達障害は病気というよりも、タイプのようなものです。

自分の特徴に合わせて工夫したり、人を頼ったりすればいい

発達障害の特性を一つのタイプだとすると、次にやることも見えてきます。その特徴が、生活上の困難にならないようにしたり、人を頼ればいいんです。 

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例えば、不注意が強いタイプなら、ミスをカバーできる環境をつくっていけばいい。

「予備を用意する」「持ち物を確認する回数を増やす」「家族や友だちに声をかけてもらう」という方法で環境を整えれば、困ることは減るでしょう。 

ほかの人ができていることがうまくできないと、自分が劣っているように感じることもあるかもしれません。

でも、何度も書きましたが、得意不得意があるのはあたりまえのこと。不得意なことを気にしすぎるあまりに、あなたのよさが消えてしまわないようにしてほしいと思います。

「発達障害」が気になる人は一度、大人に相談するのもいい

発達障害に関する基本的な考え方は説明しましたが、「自分は発達障害かも」と気になる人は、一度、親に相談してもいいでしょう。親には話しにくいという場合には、学校の先生やスクールカウンセラーだとどうでしょうか。 

大人の協力を得て、医師などの専門家の話を聞くことができれば、自分の特徴をよりくわしく理解できます。 発達障害の特性があることがわかって、学校などで配慮や支援を受けられるようになる場合もあります。 自分一人の力では悩みごとを解決できないときには、大人を頼ることも考えてみてください。 

本田 秀夫 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授

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ほんだ ひでお / Hideo Honda

精神科医師。医学博士。特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。1991年より横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。その後、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長などを経て、2014年より現職。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症協会理事、日本自閉症スペクトラム学会常任理事、日本発達障害学会評議員。2013年刊の『自閉症スペクトラム』(SBクリエイティブ)は5万部超のロングセラー。

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