アジア富裕層が吊り上げ、マンション急騰の脆弱 実需と乖離し、国内サラリーマンは手が届かず

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このように、マンションバブルを演出した3つの要因のうち、「海外の富裕層からの資金流入」と「日銀の金融緩和政策」は今後も続き、「日本の富裕層によるタワマン節税」は近く消滅する可能性があります。これらを総合的に見ると、マンションバブルは簡単には崩壊せず、さらに急騰する可能性は低いにしても、向こう5~10年は高値での推移が続くと筆者は予想します。

もちろん、タワマン節税の消滅が大きくクローズアップされたり、日銀が金融政策を転換したりすれば、バブルは崩壊するかもしれません。また、バブルは一種の共同幻想なので、そういう大きな出来事がなくても、ちょっとした社会のムードの変化であっさり弾けます。

首都圏のマンション購入はリスクが大きい

では、バブル崩壊のリスクがある首都圏のマンションに対し、われわれはどう向き合うべきでしょうか。まず、投資対象として首都圏のマンションを購入するのは、価格下落のリスクが大きく、避けるべきでしょう。すぐに崩壊はしないとしても、今が高値圏という可能性が高いからです。

すでにマンションを所有しているという人も、さっさと高値で売り抜けるのが得策です。ただし、居住用として首都圏のマンションを購入し、資産価値を気にしないというなら、慌てて売る必要はありません。

これから居住用に首都圏のマンションを購入しようと考えている人は、リスクを直視する必要があります。色々なリスクがある中で何より考えたいのは、ローンを返済できなくなるというリスクです。

今は2人合わせて年収1400万円以上というパワーカップルも、病気、リストラ、離婚などで年収が半減するリスクはあります。バブル崩壊後に、年収が半減してローンの返済が困難になり、慌ててマンションを売ったら価格が下がっていて、巨額の借金だけが手元に残った……という悲惨なシナリオが考えられます。

ますます不透明さを増す現代社会。リスクを直視するなら、首都圏のマンションを購入するのではなく、賃貸物件に住むという選択が断然お勧めなのです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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